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2018年9月6日木曜日

子どもの運動能力の成長を促す5つのアクション

こんにちは。メンタルコーチの伴です。


前回のブログでは、子どもの運動能力向上には全身の調整能力を高める必要であり、それは多様な運動経験によって培われるという話をしました。

今回は 「子どもの運動能力の成長を促す5つのアクション」をサクッとご紹介します。

1.自発性を尊重する

好きこそものの上手なれ。これはどうやら本質に近いのかもしれません。

モチベーションのメカニズムについて100年以上研究が進められてきましたが、好きだからやるという内発的モチベーションに勝る意欲の源泉は発見されていません。

子どもが興味を示したことをとことんやらせてあげることが、運動機会を増やすことに繋がります。

6歳頃までに脳や脊髄などの神経系が急激に発達します(下図参照)。




この時期は、特に全身の調整力が飛躍的に向上させるチャンス

この前、うちの子どもが変な踊りしてるんだけど、どうすべき?と聞かれましたが(笑)、

どんどん変な(=独創的な)踊りさせちゃってください。



2.同じ運動を続けない

子どもの意識は移ろいやすいですよね?まだ認知能力が発達の途中で、同じことにずっと集中していられません。

もし何か特定の運動をやっていた場合、10-15分で運動に変化を与える必要があります。

これ大人も同じで、例えばクリスティアーノ・ロナウドも10分おきにドリルを変えるそうです。

興味を保ち、集中力を持続させる術ですね。



3.遊具は多すぎても良くない

幼稚園の遊具の数と園児の運動能力の因果関係を調べた研究があります。

①22個以上
②17-21個
③16個以下

どのグループの幼稚園の園児が最も運動能力が高かったと思いますか?

正解は②でした。

多ければそれだけ、運動の多様性が増えそうですよね。

遊具が多すぎると使用用途通りの使い方しかされず、独創的な使い方をするまで発展していきにくいという点が指摘されています。

独創的に使うことで、そんな動きするか!という多様な運動が増える。それが、運動能力の発達に繋がることが報告がされています。

逆に遊具が少なくても、全ての遊具への興味が満たされてしまうと、遊びや運動機会の促進に繋がらないのです。

ご家庭に当てはめて考えれば、遊具の数を何個にするかにこだわるというよりは、子どもの好奇心を掻き立てるに充分な数を用意する、ただし、与えすぎないラインを探ることが大事なのでしょうね。


4.一緒に遊ぶ

保育士の運動参加の回数と子どもの運動能力の関係を調査した研究があります。

保育士が運動参加する回数が多いほど、子どもの運動能力が高いという結果がでました。

子ども、特に幼児期(1-6歳)の子は、親や保育士など心を許した大人と一緒に遊ぶことが大好きです。

大人が一緒になって遊ぶと喜んで遊ぶ。それが、運動能力向上にもつながるのですね。

また、難しい運動ほど、一緒に挑戦することが大事です。

出来ないと感じたことでも、大人が楽しげにやっている姿を見せることで、チャレンジする意欲になります。


5.結果ではなくアクションを褒めてあげる

子どもは褒められることで、その褒められたことを再現しようとします。

挑戦したことを褒められれば、さらに挑戦しようとします。

気を付けなくてはならないのは、頭の良さや能力を褒められると、もっと褒められようと、能力の高さを示せることをやろうとします。

つまり、難しいことに挑戦しなくなります。

勉強に関する研究ですが、Growth mindsetで有名なDweck博士の小学校5年生を対象にした研究を紹介します。

最初に全ての生徒に、難易度中の問題を解いてもらいました。その後、全ての生徒たちを下記の3つのグループに分けて、それぞれのフィードバックを与えました。

①能力の高さを褒める 例:この高得点を取るということは、君はとっても頭いいね!
②結果への驚きを伝える 例:これは高得点だね!
③努力を褒める 例:この高得点を取るということは、とても努力したんだね!

その後、誰も高得点を取れないような難しい問題を解いてもらったあとに、最後にまた難易度中の問題を解いてもらい、その得点を計測しました。

最も高得点を出したのは、③でした。2番目の②に比べ30%の差でした。

逆に最も低い点数だったのが、①でした。②に比べ30%も低い結果です。

子どもたちに何が起こったのでしょうか。

①グループの子は、③の子に比べ、褒められた後に、次のテストへの点数への期待感が高くなったはずです。

しかし、次にやったテストは非常に難しく、③の子よりも落胆したことが推測されます。

それにより、問題を解くというタスクへの意欲が薄れ、初回の問題と同レベルの難易度だったにも関わらず、パフォーマンスが下がった子が多かったと整理されています。

この影響をアンダーマイニング効果と呼びます。

好きでやっていたことでも、結果を褒め続けられることで、褒められることが目的になり、褒められないとわかった時点で、その行動をやめてしまいます。

運動への意欲を奪わないために、結果ではなく、その行動や努力を褒めてあげることをお勧めします。


5つのアクションを書いてきました。科学というのは、これが最も多くの人に当てはまるよね、という根拠に基づいた指針です。

全ての人に当てはまるということではありませんが、直感、経験論よりも多くの人に当てはまる可能性が高いという代物です。

ご参考になれば。


ちなみに、


9月29日14時@代々木上原で、子育てに関する4人のプロにお集まりいただき、下記4つの観点からより良い子育てを考えていただく最大20人の小規模カンファレンスを行います。

①身体の発達
②栄養と食育
③子育ての実践
④子育ての心理学

第一部(14-17時)は勉強会。
第二部(17-20時)は交流会。

飲食代込みで、なんと入場料3000円!


ご興味ある方は、下記までお問い合わせください。

ban.seminar@gmail.com


それでは~
ばん

2017年11月14日火曜日

大谷選手がすごい選手たる理由

こんにちは。メンタルコーチの伴です!


11月11日に大谷翔平選手が記者会見で、海外挑戦を正式表明しました。


1時間程度の会見全て観ましたが、大谷選手がなぜここまでの選手になれたのかが、よくわかる会見でした。


大谷選手の回答から垣間見る考え方を、心理学のGrowth Mindsetという理論に基づいて説明していきますね(^^)


1.大谷選手が目指していることは何か?


記者会見で大谷選手はまっすぐこう答えました。


「ナンバーワンの選手になりたい」


このナンバーワンとは世界一のこと。


やはり超一流の選手は規模の大きな夢を持っているわけです。


この夢の実現のために、「MLB(メジャーリーグ)を選択するのは自然のこと」と言っていました。


社会学習理論というものがあります(Bandura & Walter, 1963, 1977)。


生活を送る中で、たくさんの情報を見聞きし、ある程度自分の出来ることの枠組み(自信)を作っていきます。


小学生の時文集などで大きな夢を描くも、歳を重ねるごとに目標は控えめになりがちななのはこのせいです。


記者会見の場で、大きな夢をまっすぐな目で述べられる大谷選手に、揺るぎない自信を感じ取りました。


2.なぜこのタイミングでのMLB挑戦か?


この質問には前提があります。


昨年合意されたMLBの新労使協定で25歳未満の国外選手と契約する際に使える金額が抑えられ、大谷は最大350万ドル(約4億円)程度にとどまると予想されています。


あと2年待てば、この協定の対象外となり、大型契約可能となるのに、なぜ今?という疑問が上がったのです。



この質問に対する大谷選手の回答は、「自分はまだまだ不完全な選手と認識。だから、早く挑戦したかった。」


これに対し、他の記者から、「完全な選手になってから、挑戦するという発想にはならなかったのですか?」との質問。


大谷選手は「(どこまでやれるのかという)自分に対する興味、じゃないかと」と回答していました。


この記者と大谷選手会話のずれは、優先順位なんですね。


このブログでよく出るGrowth mindsetFixed mindsetの違い。


記者の方は、契約金額や結果を優先に考えているため、


なんで今なの?あと2年待てば、もっとお金もらえるのに。


もっと完成されてから行かないの?そっちのほうが結果残せるだろうに。


でも、大谷選手は、世界一の選手になるという目的達成には、どの判断がベストなのかを考えているわけです。


成長を優先順位に置いた考え方をGrowth mindsetと呼び、自身がどれだけ有能なのかをアピールすることを優先する考え方をFixed mindsetと言います(Dweck, 2006)。


パフォーマンス発揮の観点から言うと、Growth mindsetはとても有効です。


ワールドシリーズで優勝したい、サイヤング賞のタイトルを取りたい…こういうものはあくまで目標であって、目的ではありません。


なぜ優勝したいのか、なぜタイトルを取りたいのか…この探求から出てくる回答が目的であり、やる気の源泉です。


この目的が外発的要因(お金や名声などの報酬や罰則回避)に結び付けられるよりも、自分が好きだからやる、それが良い人生だからやるといった内発的要因に結びつけることが、強く持続するやる気になり、結果として成功しやすくなります


大谷選手で言うと、世界一の選手になりたい、というのが内発的やる気の源泉です。


これの達成が自分にとっての幸せな人生であり、諦められない夢となっていく。


この夢の実現のために必要な判断が、今のMLB挑戦だったということなのでしょう。


3.会見の節々に出た大谷選手の謙虚さ


このマインドセットは、大谷選手の謙虚な行動にも繋がってきています。


ある意味記者泣かせの会見だったかもしれませんね。


ワールドシリーズ優勝目指します!サイヤング賞狙います!


そういう発言をしてくれたほうが、記事にインパクトが出やすいでしょうが、大谷選手は、数値的な目標に対し、「自分はまだ数字を語れるレベル、環境にいない」という発言に終始。


この回答からも、目的ありきの目標設定を行っている姿勢がわかります。


「世界一の選手になりたい」


この目的に向かい、どのような目標設定が正しいのか。


それは実際にチームが決まってみないとわからないという姿勢。


謙虚さは自信にリンクされ考えられがちなのですが、それだけではありません。


どこに優先順位を置いているのかがポイントなのです。


短期視点で見ている人にとっては、その場で自身の有能さをアピールできるかどうかが重要事項になります(Fixed mindset)。


一番手っ取り早いのは、口にすることであり、しばしば周りから自慢と捉えられることもあります。


かたや、長期視点で見ている人は、その場だけではなく、自分の努力の結果で示そうとします(Growth mindset)。


実際に大谷選手も周りからの評価を気にしていないわけではありません。


「野球は記録で評価されやすい側面もある。二刀流ではなく、どちらか一本に絞ることで、結果を残しやすくできる選択肢もあるように思うが?」という質問に対し、大谷選手はこう答えました。


「すごく難しい質問です。この点に関しては、自分に自問自答しながら、やってきた。人の価値観はそれぞれ。記録で評価される部分はあると認識した上で、やってきた二刀流は自分の軸だけいえば、プラスになっている。周りにとってどうかという視点も含め自問自答してきたが、少なくとも自分だけの軸で言えば、満足している」


自分の価値観と周りの評価との折り合いを自問自答してきた葛藤が表れていますよね。


世界一の選手の定義についても、「ファンが、大谷が世界一の選手だ、と言ってくれるのが一番」と言っていました。


そのためには、口で「自分はすごいんだ」と言うのはなく、自分が成長して、そのプレーを見せることを選択しているのです。


この選択が、謙虚という行動に繋がっているわけなんです。


こんな考え方を出来るのは大谷選手だからと思われるかもしれませんが、このマインドセットは生まれ持った性格ではなく、後天的に獲得できるものであります。


誰でも、いつからでも得られるものなのです。


11月26日のセミナー@京急蒲田では、マインドセットの獲得方法をテーマにしております。


ご興味があるかたは、下記メールアドレスまでお問い合わせください☆


ban.seminar@gmail.com


それでは~
バンヒロ

2017年11月11日土曜日

格上相手に活躍できる選手とそうじゃない選手のメンタル

 こんにちは。メンタルコーチの伴です!


今夜はサッカー、日本対ブラジルでした。


やはりブラジル強い!1-3でした。


サッカーは好きで良く見ているのですが、格上との対戦の時に活躍できる選手と格下との試合の時にだけ、活躍する選手がいるように思います。


もちろん技術や体力といった実力の差が最も大きな違いでしょうが、メンタル面の差もあります。


試合をやる限り、勝ちを目標にします(もちろん状況によって異なる場合もあります)。


相手が強ければ強いほど、勝ちという目標に対し、物理的にも心理的にも障害となります。


心理的な障害を乗り越えられる選手とそうじゃない選手の差は何か。


恐らく多くの方がその差は、“自信”だろうと思われるでしょう。


それも正しいです。


自信とは、望む結果が得られるかどうかに対する自身の目算です。


自信が高いということは、望む結果が得られると思っているわけです。


従い、自信が低い人よりも、相手が強いという障害を乗り越えられると信じ、行動に移せるのです。


ただ、自信の高さ以外にも、障害に立ち向かう姿勢に違いを生むメンタル要因があります。


それは、障害に対する捉え方です。


多くの人が、驚くかもしれませんが、この障害が高ければ高いほど、喜ぶ人がいます。


心理学の世界では、こういう人が持つマインドセットをGrowth Mindset(以下、成長マインドセット)と呼びます(Dweck, 2006)。


障害の高さが、自分の自信以上の場合、プレッシャーと呼ばれるストレス反応が出てきます。


成長マインドセットの人は、このプレッシャーを成長の糧だと捉えるのです。


自分のセミナーでは、例として孫悟空を用いたこともあります。


自分より強い相手と対峙した時、「ワクワクすっぞ」というのです。


この敵を倒す、つまり、この障害を乗り越えた先には、さらに強くなった自分がいるという考え方です。

これは、鳥山明ワールド内のみの話ではありません。


前田健太選手は、契約金額をどんなに買いたたかれようが、レベルの高いメジャーリーグで自分の力を伸ばしたいと、2年前にドジャースに移籍しました。


大谷翔平選手も、労使協定の関係で、契約金額の上限が低く設定されようが、メジャー挑戦を表明しました。


彼らの優先順位は、自身の成長なのです。


お金や名声ではないのです。


そういう人にとっては、相手が強いという障害は、自分を伸ばしてくれる成長の糧なのです。


逆に、お金や名声を優先する人にとってはどうでしょうか。


この試合で勝たないと、評価されない。


そういう風に捉えてしまうと、強い相手は邪魔な障害物でしかないわけです。


この差は、性格ではありません。


どこの視点から見ているかだけの差です。


なりたい自分という長期視点を考え続け、自分はこういう選手になるんだと明確なイメージを持っている選手は、目の前の評価に一喜一憂しないのです。


サッカー日本代表が若手の活躍でオーストラリアに勝利した時、控えに回っていた本田圭祐選手がインタビューで、「自分に危機感を与えてくれた若手に感謝」と言っていました。


悔しかったでしょうが、その局面さえもどう自分の成長につなげるかという視点でみている人の言葉だな、と思いました。


「なりたい自分をイメージする力」


これが格上との対戦で活躍できる選手かそうでないかの違いを生むというお話。


ちなみに、11月26日(日)の私のセミナーのメインテーマは、成長マインドセットを育む方法です。


ご興味ある人は是非!


それでは~
バンヒロ