2018年2月26日月曜日

あなたの“成功”に対する考え方が周りの人の行動を変える

こんにちは。メンタルコーチの伴です。


平昌オリンピックが閉幕しましたね。日々の楽しみが一つ減ります



いやぁ~しかし、全ての日本選手が素晴らしい活躍を見せてくれました。



メダルを獲得された選手たちが称賛されるのはもちろんですが、メダルに届かなかったもののオリンピックという大舞台で自己ベストを出した選手、出すために全力を尽くした選手たちにも惜しみない称賛が与えられてほしいなと願います。



称賛。評価。



実はここに実力発揮の環境づくりのポイントが秘められています。



評価とは、「その行動は望ましいのでを続けてほしいんですよ」というメッセージであり、その裏には、評価する側の成功に対する考え方が潜んでおります。



評価には、結果にするものとプロセス(行動)にするものがありますよね。



結果で評価するというのは、結果を得ることこそが成功という考えの表れであり、「あなたは望ましい結果を出したので、素晴らしいです」という風に捉えられます。



結果はわかりやすく、かつ公平に評価するために持ってこいの指標であります。



ただ、結果だけで評価される環境で育つまたは身を置くと、成功=良い結果を出すこと(スポーツで言えば勝利、ビジネスで言えば利益、学業で言えばテストの点数)という考えが身に付きやすくなります。



人には、人に影響を与えたい、人の役に立ちたい(関係性)という基本的な心理ニーズが備わっており、自分自身で確固たる評価軸がない限りは、置かれた環境の評価基準は大きな関心事であるからです(Deci & Ryan, 1985, 1991, 2000)



しかしながら、結果というのは、個人(やチーム)が完全にコントロール出来るものではありません。



大会で勝てる見込みが限りなく100%に近いアスリートがいたとしても、100%の確証を持つことはできません。


有能なビジネスパーソンでも、思い通りの利益を上げることはできませんし、どれだけ優秀な学生でも、受験の前に100%合格できる確証を持つことはできません。



結果で評価するというのは、この“不確定さ”にも責任を負わせるということです。



目標としている結果が明確で現実的あれば、そのような評価制度でも、短期的には意欲は上げられます。


しかし、その目標が困難であったり、期待が大きくなればなるほど、失敗に対する恐れが高まり、そのタスク(スポーツ、仕事、勉強など)に対する意欲は下がり始めます。


この図☟で言えば、左に移動します(右に行けば行くほど意欲が高まる)。


実力発揮の基本として、“結果はプロセス(行動)の副産物”というものがあります。



完全にコントロールできるのは自分の行動のみであり、結果を望むならそれに相応しい行動を起こすべしという考え方です。



実力が発揮されやすい状態とは、やるべきこと(プロセス)に意識が投下されている状態であり、努力や成長を評価されるシステムこそが、個人がプロセスに集中できる環境づくりに重要な役割を果たします。



アスリート、社員、子供に望ましい結果への行動意欲を高めてほしいのであれば、評価する側が下記の考え方の持つことが必要です。



1.結果は重要な目標であるが、最も重要な目的ではない。


2.勝ち負け(ビジネスで言えば契約受注逸注、勉学で言えば受験合格不合格んど)は結果によって決まるが、成功失敗は結果によって決まるものではない。


3.成功とは、目標に向かって行った努力やそれによる進歩である。結果が伴わなかったとしても、目標に向かって全力を尽くしたのであれば、決して失敗ではない。


4.負け=失敗ではない。負けること(受注を逃す、受験不合格など)が、失敗であったり、人間として価値がないことの証明ではない。


この考え方に基づく評価がなされる環境が、この環境下にいる個人の失敗に対する恐れを下げ、タスクに対する意欲やパフォーマンスの質を高めることが研究で明らかになっています(Smith, Smoll & Passer, 2002)



つまり、指導者、リーダー、親御さんなどの成功に対する考え方が、アスリート、同僚、子供の実力発揮や努力量に大きく影響しているのです。



ちなみに、アメリカでは、30年を超す長年の研究を基に作られたCoach Effectiveness Training(CET)という組織的なナショナルアスリート育成プログラムがあるのですが、このプログラムの基礎となったのが、上述の考え方であります。



私も講習をさせていただくときには、この考え方を取り入れています。



例えば、中学生や高校生に対して講習を行う際は、必ず講習の冒頭に、発言をすること自体がクラスへの大きな貢献であること、正解不正解は大きな問題ではないこと、そして、授業の最後に最も授業に貢献してくれた人3名を表彰すること(発言してくれるたびにチョコをあげ、授業の最後にチョコを一番多くもらった人が授業に最も貢献した人)を、伝えるようにしています。



また発言してくれた時に、その行動を後悔させないような雰囲気づくりを忘れないことも重要です。



素直な中・高校生の爆発力はすごくてですね(笑)失敗に対する恐れをなくしてあげると、ものすごい数を発言してくれるようになります。先日の3時間の講習では、60個のチョコレートがなくなるほどでした。



結果を求めることだけではなく、彼らが唯一コントロールできるもの=行動(努力)に対して、しっかり評価してあげる評価制度づくりが重要なんですね。



このアプローチは未成年だけではなく、大人にも有効であることがわかっています。気を付けなくてはいけないのは、大人相手に初歩的なことで褒めたりするとやぶ蛇になりますので、評価する内容、褒め方には気を付けなくてはなりませんけどね(Smith & Johnson, 1990)



この理論で言えば、オリンピック後の今、メダリストばかりを称賛するのではなく、自己ベストを出した選手や結果に関係なくオリンピック出場まで上り詰め、大舞台で結果に向かって最善を尽くした努力にも平等に注目が集まれば、もう少し日本人選手たちが結果ではなく結果へのプロセスに意識が向けられるようになるはずです。



まぁ理想論ですが。。。微力ながら、日本人アスリートの実力発揮ができる環境づくりに貢献する投稿をしてみました


以上、周りの成功に対する考え方(=評価)が、その人の努力量に大きく影響するというお話でした。


なお、


次回セミナーは、“大舞台で結果を出す人出さない人のメンタルスキル”を予定しています。


3月18日(日)10-12時@京急蒲田。


ご興味ある方下記までメールください。


ban.seminar@gmail.com



最後まで読んでいただき、ありがとうございました!(^^)!


それでは~
バン

2018年1月28日日曜日

血液型占いから学ぶ直感の危うさ

こんにちは。メンタルコーチの伴です!


突然ですが、獰猛なサメに関する質問です。


1900年以降、日本でサメに殺された人数は何人くらいだと思いますか?


是非本当に考えてみてください。


118年間ですから、1年で1人だとしたら118人。


2人なら236人。


5人だとしたら、590人


正解は、15人だそうす。


8年に1人くらいの割合ですね。


あれ、思ったより少ない?と感じられた方が多いかもしれません。


これ、アメリカの大学院の最初の授業で聞かれた質問でした。
(アメリカ内の数字でしたが。)


アメリカはサメ遭遇率が最も高い国だそうです。


そんなアメリカでも、サメに襲われて命を落とすよりも、海岸沿いを歩いていて、転落死等で命を落とした確率のほうがよっぽど高いそう。


宝くじに当たる確率や雷に打たれる確率よりも低いと言われています。



それなのになぜ人は、シャークアタックを恐れるのでしょうか。


答えは、映画ジョーズの影響が大きそうです。マジです(笑)。


それに加えて、サメに襲われて命を落としたとか、片腕を失ったというショッキングな事故が大々的にメディアで取り上げられるからだと言われています。


それにより恐怖心が無駄に煽られてしまったのです。


このように直感は、簡単に操作されます。


もう一つ例を挙げましょう。


日本で広まっている血液型診断。


A型は○○、B型は○○…というあれです。


これ、日本特有のものです。


心理学では、血液型と日本で言われている性格分類の因果関係は証明されていません。


でも何となく正しいように感じる…。


その理由は、誰にでも当てはまりそうな項目だったり、刷り込み(正しいと思う考え方があると、肯定する情報ばかりが印象に残る)と言われています。


血液型診断を、友達同士の会話であーだこーだ言っている分には、問題はないと思います。


しかし、それを根拠に、企業が採用を行うとか、パートナーを選ぶなどに応用した場合、うまくいく確率は上がらないということです。


直感がいつも間違っているというわけではないですが、外の情報に影響(悪く言えば操作)されやすいですよ、ということです。


サメの質問の後、教授がどや顔で「直感がいかに脆いかわかるだろ?」と言いながら、「だからこそ、科学的根拠に基づいた知識を持つことが重要だ」と教えてくれました。


経験則に頼るのは、直感よりもうまくいく可能性が上がるかもしれません。


しかしそれでも、まだ不十分です。


なぜなら、


その行動を取ったから、うまくいったのか。


その行動を取ったのに、うまくいったのか。


が、わからないからです。


現実世界では、複雑な事象が入り組んでいますよね。


これをやったから、効果が出たんだという因果関係をはっきりさせることは非常に難しいのです。


そういった因果関係を科学的に解明してくれているのが、研究です。


そして、科学的に行われた研究の集合知が理論と呼ばれます。


ここまで言っておきながらなんですが、研究で証明されたことが100%正しいというわけではない、というのが心理学の面白いところです。



例えば、将棋などで勝つ確率を高めるためにセオリーを学びますよね。


将棋でのセオリーとは、勝てる確率を高める攻め方のことを言います。


それと同じと考えてもらえるとわかりやすいかもしれません。


セオリーの日本語訳が理論です。


つまり、理論を学ぶということは、望ましい結果を得る可能性を高めてくれることなのです。


100%正しいとは言えませんが、理論以上に正しいと言える根拠はないのです。


理論のない実践は危うい。



実践のない理論は空論でしかない。


理論を根拠とした実践を追い求める姿勢が、あなたを一流へと導きます。


「私のことは嫌いになっても、理論のことは嫌いにならないでね~」というお話でした。


それでは~
バン

2017年11月14日火曜日

大谷選手がすごい選手たる理由

こんにちは。メンタルコーチの伴です!


11月11日に大谷翔平選手が記者会見で、海外挑戦を正式表明しました。


1時間程度の会見全て観ましたが、大谷選手がなぜここまでの選手になれたのかが、よくわかる会見でした。


大谷選手の回答から垣間見る考え方を、心理学のGrowth Mindsetという理論に基づいて説明していきますね(^^)


1.大谷選手が目指していることは何か?


記者会見で大谷選手はまっすぐこう答えました。


「ナンバーワンの選手になりたい」


このナンバーワンとは世界一のこと。


やはり超一流の選手は規模の大きな夢を持っているわけです。


この夢の実現のために、「MLB(メジャーリーグ)を選択するのは自然のこと」と言っていました。


社会学習理論というものがあります(Bandura & Walter, 1963, 1977)。


生活を送る中で、たくさんの情報を見聞きし、ある程度自分の出来ることの枠組み(自信)を作っていきます。


小学生の時文集などで大きな夢を描くも、歳を重ねるごとに目標は控えめになりがちななのはこのせいです。


記者会見の場で、大きな夢をまっすぐな目で述べられる大谷選手に、揺るぎない自信を感じ取りました。


2.なぜこのタイミングでのMLB挑戦か?


この質問には前提があります。


昨年合意されたMLBの新労使協定で25歳未満の国外選手と契約する際に使える金額が抑えられ、大谷は最大350万ドル(約4億円)程度にとどまると予想されています。


あと2年待てば、この協定の対象外となり、大型契約可能となるのに、なぜ今?という疑問が上がったのです。



この質問に対する大谷選手の回答は、「自分はまだまだ不完全な選手と認識。だから、早く挑戦したかった。」


これに対し、他の記者から、「完全な選手になってから、挑戦するという発想にはならなかったのですか?」との質問。


大谷選手は「(どこまでやれるのかという)自分に対する興味、じゃないかと」と回答していました。


この記者と大谷選手会話のずれは、優先順位なんですね。


このブログでよく出るGrowth mindsetFixed mindsetの違い。


記者の方は、契約金額や結果を優先に考えているため、


なんで今なの?あと2年待てば、もっとお金もらえるのに。


もっと完成されてから行かないの?そっちのほうが結果残せるだろうに。


でも、大谷選手は、世界一の選手になるという目的達成には、どの判断がベストなのかを考えているわけです。


成長を優先順位に置いた考え方をGrowth mindsetと呼び、自身がどれだけ有能なのかをアピールすることを優先する考え方をFixed mindsetと言います(Dweck, 2006)。


パフォーマンス発揮の観点から言うと、Growth mindsetはとても有効です。


ワールドシリーズで優勝したい、サイヤング賞のタイトルを取りたい…こういうものはあくまで目標であって、目的ではありません。


なぜ優勝したいのか、なぜタイトルを取りたいのか…この探求から出てくる回答が目的であり、やる気の源泉です。


この目的が外発的要因(お金や名声などの報酬や罰則回避)に結び付けられるよりも、自分が好きだからやる、それが良い人生だからやるといった内発的要因に結びつけることが、強く持続するやる気になり、結果として成功しやすくなります


大谷選手で言うと、世界一の選手になりたい、というのが内発的やる気の源泉です。


これの達成が自分にとっての幸せな人生であり、諦められない夢となっていく。


この夢の実現のために必要な判断が、今のMLB挑戦だったということなのでしょう。


3.会見の節々に出た大谷選手の謙虚さ


このマインドセットは、大谷選手の謙虚な行動にも繋がってきています。


ある意味記者泣かせの会見だったかもしれませんね。


ワールドシリーズ優勝目指します!サイヤング賞狙います!


そういう発言をしてくれたほうが、記事にインパクトが出やすいでしょうが、大谷選手は、数値的な目標に対し、「自分はまだ数字を語れるレベル、環境にいない」という発言に終始。


この回答からも、目的ありきの目標設定を行っている姿勢がわかります。


「世界一の選手になりたい」


この目的に向かい、どのような目標設定が正しいのか。


それは実際にチームが決まってみないとわからないという姿勢。


謙虚さは自信にリンクされ考えられがちなのですが、それだけではありません。


どこに優先順位を置いているのかがポイントなのです。


短期視点で見ている人にとっては、その場で自身の有能さをアピールできるかどうかが重要事項になります(Fixed mindset)。


一番手っ取り早いのは、口にすることであり、しばしば周りから自慢と捉えられることもあります。


かたや、長期視点で見ている人は、その場だけではなく、自分の努力の結果で示そうとします(Growth mindset)。


実際に大谷選手も周りからの評価を気にしていないわけではありません。


「野球は記録で評価されやすい側面もある。二刀流ではなく、どちらか一本に絞ることで、結果を残しやすくできる選択肢もあるように思うが?」という質問に対し、大谷選手はこう答えました。


「すごく難しい質問です。この点に関しては、自分に自問自答しながら、やってきた。人の価値観はそれぞれ。記録で評価される部分はあると認識した上で、やってきた二刀流は自分の軸だけいえば、プラスになっている。周りにとってどうかという視点も含め自問自答してきたが、少なくとも自分だけの軸で言えば、満足している」


自分の価値観と周りの評価との折り合いを自問自答してきた葛藤が表れていますよね。


世界一の選手の定義についても、「ファンが、大谷が世界一の選手だ、と言ってくれるのが一番」と言っていました。


そのためには、口で「自分はすごいんだ」と言うのはなく、自分が成長して、そのプレーを見せることを選択しているのです。


この選択が、謙虚という行動に繋がっているわけなんです。


こんな考え方を出来るのは大谷選手だからと思われるかもしれませんが、このマインドセットは生まれ持った性格ではなく、後天的に獲得できるものであります。


誰でも、いつからでも得られるものなのです。


11月26日のセミナー@京急蒲田では、マインドセットの獲得方法をテーマにしております。


ご興味があるかたは、下記メールアドレスまでお問い合わせください☆


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それでは~
バンヒロ

2017年11月11日土曜日

格上相手に活躍できる選手とそうじゃない選手のメンタル

 こんにちは。メンタルコーチの伴です!


今夜はサッカー、日本対ブラジルでした。


やはりブラジル強い!1-3でした。


サッカーは好きで良く見ているのですが、格上との対戦の時に活躍できる選手と格下との試合の時にだけ、活躍する選手がいるように思います。


もちろん技術や体力といった実力の差が最も大きな違いでしょうが、メンタル面の差もあります。


試合をやる限り、勝ちを目標にします(もちろん状況によって異なる場合もあります)。


相手が強ければ強いほど、勝ちという目標に対し、物理的にも心理的にも障害となります。


心理的な障害を乗り越えられる選手とそうじゃない選手の差は何か。


恐らく多くの方がその差は、“自信”だろうと思われるでしょう。


それも正しいです。


自信とは、望む結果が得られるかどうかに対する自身の目算です。


自信が高いということは、望む結果が得られると思っているわけです。


従い、自信が低い人よりも、相手が強いという障害を乗り越えられると信じ、行動に移せるのです。


ただ、自信の高さ以外にも、障害に立ち向かう姿勢に違いを生むメンタル要因があります。


それは、障害に対する捉え方です。


多くの人が、驚くかもしれませんが、この障害が高ければ高いほど、喜ぶ人がいます。


心理学の世界では、こういう人が持つマインドセットをGrowth Mindset(以下、成長マインドセット)と呼びます(Dweck, 2006)。


障害の高さが、自分の自信以上の場合、プレッシャーと呼ばれるストレス反応が出てきます。


成長マインドセットの人は、このプレッシャーを成長の糧だと捉えるのです。


自分のセミナーでは、例として孫悟空を用いたこともあります。


自分より強い相手と対峙した時、「ワクワクすっぞ」というのです。


この敵を倒す、つまり、この障害を乗り越えた先には、さらに強くなった自分がいるという考え方です。

これは、鳥山明ワールド内のみの話ではありません。


前田健太選手は、契約金額をどんなに買いたたかれようが、レベルの高いメジャーリーグで自分の力を伸ばしたいと、2年前にドジャースに移籍しました。


大谷翔平選手も、労使協定の関係で、契約金額の上限が低く設定されようが、メジャー挑戦を表明しました。


彼らの優先順位は、自身の成長なのです。


お金や名声ではないのです。


そういう人にとっては、相手が強いという障害は、自分を伸ばしてくれる成長の糧なのです。


逆に、お金や名声を優先する人にとってはどうでしょうか。


この試合で勝たないと、評価されない。


そういう風に捉えてしまうと、強い相手は邪魔な障害物でしかないわけです。


この差は、性格ではありません。


どこの視点から見ているかだけの差です。


なりたい自分という長期視点を考え続け、自分はこういう選手になるんだと明確なイメージを持っている選手は、目の前の評価に一喜一憂しないのです。


サッカー日本代表が若手の活躍でオーストラリアに勝利した時、控えに回っていた本田圭祐選手がインタビューで、「自分に危機感を与えてくれた若手に感謝」と言っていました。


悔しかったでしょうが、その局面さえもどう自分の成長につなげるかという視点でみている人の言葉だな、と思いました。


「なりたい自分をイメージする力」


これが格上との対戦で活躍できる選手かそうでないかの違いを生むというお話。


ちなみに、11月26日(日)の私のセミナーのメインテーマは、成長マインドセットを育む方法です。


ご興味ある人は是非!


それでは~
バンヒロ

2017年10月31日火曜日

自分の人生を好きになること


今日兵庫で、寝ていた夫を刺し殺す事件があった。奥さまが朝旦那さんを起こしに行って、旦那と喧嘩になり、腹を刺したんだとか。


日々色々なニュースがあるが、つい考えてしまうのは、その現場にいた加害者、被害者の頭の中のこと。


どんな環境で生きてきたのか。


その日どんなことがあったのか。


そして、その事故が起こったとき、どんな感情が沸き起こっていたのか。


どうして抑えられなかったのか。


誰だって、良い人生を歩みたい。


良い人生に対する考え方、これが価値観だ。


これは人それぞれであって然るべき。


誰かに描いてもらうものではない。


自分の価値観に沿った生き方が出来ていない人は、理由もなくイライラしてしまう。


些細なことで怒りや憎しみスイッチが入ってしまう。


感情は意味があって出てくる。


多くの人が勝手に良くない感情と決めている怒り、不安、悲しみなども、喜び、興奮同様に理由があって出てきている。


その感情を深く深くひも解いてあげると、そういう感情は結局、「自分は幸せに生きたいのにその通りに生きられていない」という心の叫びなのだ。


こういう感情に目を向けて、根本を掘り下げると、自分の価値観が見えてくる。


自分はどう生きたいのか。


誰が決めたか、怒り、悲しみ、妬み、悔しさ…そういった感情はネガティブ感情と呼ばれる。


より良い人生に導いてくれるシグナルなのに。


長期的に見れば、そういう感情もポジティブな影響をもたらしてくれるのに。


感情が、なぜ出てきているのかという根源に目を向け続けてほしい。


事件の話に戻そう。


イラっと来て、刺すという行動に出ているのだろう。


きっと積もりに積もった怒りなんだろう。


でも、どんなに感情が積もろうが、行為をコントロール出来る人もいる。


出てきた感情を行動に出す人と出さない人の差。


人はこれを理性という。


理性とは、守りたいものなんだと思う。


家族や仲間との生活、趣味、自分の人生…。


大事なものがある人は、人のことを刺したりしない。


ニュースに出てくるような行動に走ってしまった人は、自分の人生を好きになれていないんじゃないか。


自分の人生を好きになるには、受け身ではだめ。自主性がいる。


自分が好きなことは何か。


幸せな人生って何か。


誰の役に立ちたいのか。


どうやって役に立ちたいのか。


なりたい自分像は何か。


なりたい自分像になるために活かせる強みは何か。


こういうことを探求する自主性がいる。


幸せは与えられるものじゃない。


周りが与えられるのは、それを考える環境ときっかけ。


こういうきっかけがあれば、人を殺めるような行動を移さなかったんじゃないだろうか。


殺人という行動だけではない。


子供の非行もそう。


子供に厳しい要求をしながらも、支援を惜しまない親の子供は非行に走る率が低いという研究がある。


これはどういうことか。


要求が高いとは期待が高いということ。


子供たちは期待に添いたいと、目の前の山を登りだす。


目の前の山は登ってみると意外とつらい。


挫折しそうになりながらも、周りの厚いサポートを糧に登りきる。


期待に応えられた!


また親から厳しい要求が来る。


「次はあの山を目指してみようか。」


登れるかなぁ。でも親の期待に応えたい。この山登れたのだから、あの山もいけるかもしれないしと、また登りだす。


辛くて、挫折しそうになるも、親からサポートがあり、頑張ってみる。


また登りきれた。


「自分は結構できるんだ。」


ここまで行けば、自分で走り出す。


自分の自信という枠の中で、なることの出来そうな最高の自分に向かって。


そして、また困難を乗り越えた経験が自信を高め、最高の自分はもっと大きいんじゃないかと思い始める。


自分は結構出来るんだのあたりから、もうこの子は自分の人生が好きになっている。


「自分は出来る」という思いがある子が、自分の将来の可能性を潰すような非行に走るとは考え難い。


この研究はそういうことを教えてくれているんだと理解した。


ストレスが猛威を振るう企業で、こういう話をすると、管理職になればなるほど、「なりたい自分像なんてないよー」という反応が来る。


別にそんな大それたことでなくていい。


①なんのために仕事しているのかという理由を、②自分が嬉しいと思う価値観に結び付けられれば、今まで敵だと思っていたストレスがスッと味方になる。


やる気には二つある。


お金や周りからの評価を得たいという外発的なものと、自分がやりたいからやるという内発的なもの。


外発的やる気による行動にはネガティブなストレスがつきまとう。


行動自体は好きじゃないけど、報酬のためにやる。これが望み通りに得られるかどうなのかに一喜一憂しなくてはならない。


コントロールできないことなのに。


お金や周りの評価は結果についてくる。


結果というのは、自分の行動の積み重ねにより訪れるものであるも、万全を尽くしても得られない時もある。


それがすごいストレスなのだ。


やりたくないことを報酬のためにやっているのに、その報酬が得られないときがあるというのは不条理だからだ。


内発的やる気による行動は、周りがどうあろうと関係ない。


自分が好きで、没頭してやっているのだ。


面白いことにやる気に沿ったこの行動は結果に繋がりやすい。


好きこそものの上手なれ、好きでやることは上達するため、結果が出る可能性が上がるからだ。


もし人の役に立ったと感じられた時に幸せだなと感じるのであれば、多くの人に感謝される自分になるということを目的にしてほしい。


人はみんな幸せになりたい。


誰に言われたわけでもなく、その幸せに向かって走り出す。


その道すがら、困難はあるだろうが、目的を思い出せば、その困難こそが、感謝される自分になるという目的達成の糧であることに気づく。


長いスパンでの目的意識を持てれば、目の前の困難は幸せな自分への近道のように見えてくる。



人を殺めてしまった人、非行に走る子供、ストレスに悩む社員…バラバラの境遇に見えるかもしれないが、みんな幸せになりたいという想いの反動から出ている行動や症状だと捉えている。



自身の人生に向き合い、長い視点を持ち、人生を好きになること。



メンタルコーチとして、人の心を勉強する者として、それぞれが自分の人生を好きになるサポートをしていきたい。

2017年10月27日金曜日

日本ハムから考える部下や子供の育て方

こんにちは。メンタルコーチの伴です。


昨日日本ハムが7社競合の末、清宮幸太郎選手を引き当てました。


日本ハムはくじ運が素晴らしい(''ω'')


過去のドラフトを見ると、ダルビッシュ、中田翔、斎藤佑樹、大谷翔平…そして今回の清宮幸太郎。


しかし、今回のブログで注目していきたいのは、運を引き寄せる方法ではなく(笑)、そのほとんどの選手を球界を代表する選手に育てる日本ハムの手腕です。


もちろん、素質が良い選手が集まっているという事実もあるでしょう。


ただ、それだけではなさそうなのです。


例えば、2008年にドラフト1位で巨人に入った大田泰示選手が昨年オフに日ハムに移籍、


巨人では8年間活躍できなかったにも拘らず、今年新天地でブレークした事実です。


自分が就活をしていたころは、やはり入社するなら自分が伸びる会社に入りたかった。


いつか自分の子供が就職するなら、子供が伸びる会社に入ってほしいと思う。


日ハムが持つ人を育てる秘訣が何なのか気になったので、調べてみました。横着してネットで。


事の真相はわかりませんが、一つこれか!という点がありました。


どうやら日ハムは、「何が何でも勝たなきゃいけない球団ではない」らしい。


日ハムファンが気分を悪くしたらごめんなさい。でも、そういう記事がありました。


これが本当だとしたら、栗山監督の采配の寛容さを頷けます。


この監督は、結果が出なくても、伸びると信じた選手を使い続ける。


これ理にかなっているんですね。


やり抜く力を持つ子供を育てる親を科学した研究があります(Steinburg, 2000)


まず、下記の通り支援有無と要求の高低の2軸で4つのタイプを分別(怠慢、寛容、独裁、賢明)。


そして、1万人を超える未成年に親の行動に関するアンケートを実施し、全ての親をこの4つに分類しました。


その結果、賢明な親(期待を高く保ちつつ、支援は惜しまない親)の子供が、他のタイプの子供に比べ、学校の成績良く、自主性が高く、うつ病になる確率や非行にはしる確率が低かったのです。


お、栗山監督はまさに、このタイプだ。


伸ばす人なんだぁ。


清宮選手、いいとこ行った!


なぜ伸びるのかについても考えてみましょう。


こういう人の下にいると、プレッシャーというストレスの捉え方が変わるということが言えます。


目先の勝ちにこだわる球団とそうじゃない球団の環境の差は、選手たちの視点にも差を生みます。


何としても勝たなくてはならないというチームは、選手を結果によって評価せざるを得なくなります。そうすると自然と選手の視点は短期的なものに向いてきます。


これ、非常に危険な状態です。


ストレスとは、与えられたタスクにおいて、望み通りの結果を得られるかどうかの不確実により出てくる反応です。


それ自体が悪いものではありません。


この反応に対する個人の判断がストレスを良いものにも悪いものにもするのです。


例を使って解説します。


プロは誰もが試合に勝ちたいと思って試合に臨みますが、そもそも試合の結果とは、選べるものではないので、不確実なものです。


勝たなきゃと思うほどにプレッシャーと呼ばれるストレス反応は大きくなります。


欲しいのに、得られるかわからない。


相手が強いほどに、勝ちという結果を得られる可能性が下がりますので、邪魔なものでしかなく、目の前の試合というストレス要因をネガティブに捉えやすくなります


逆に目先の勝利以上に、チームの成長という長期視点を重要視しているチームでプレーしている選手はどうでしょうか。


「お前は偉大な選手になれる」と期待を持たれるわけです。


栗山流の期待は大きく、支援は厚く。


本人も使われるかどうかの目先の結果ではなく、自分が成長したい姿を思い描き、それを目指そうという余裕が出てきやすくなります。


それを目指すためには、練習し、実践でその力を出す鍛錬をするということしかないでしょう。


となると、「試合に出たい」となるわけです。


勝てなくて良いという選手はいませんから、勝ちに行きます。実力を発揮しに行きます。前述のチームの選手同様に、結果の不確実性がストレス反応を生み出します。


ただ、このストレスの捉え方はどうでしょうか。


試合に出たい、結果を残せる選手になりたいと思っている人には、目の前のストレスは成長の糧なんです。


相手が強ければ強いほど、自分を伸ばすチャンスなんです。


前述の選手は、勝たなきゃいけないのに相手が強いほどネガティブなストレスが増えました。


この違いわかりますか?


ストレス自体はネガティブなものではないのです。


なりたい自分像という長期視点に立って目の前の試合を考えると、ネガティブだと捉えていたプレッシャーが成長の糧に変わる。


ストレスを敵にするのか、味方にするのかは、あなたの視点次第。


日本ハムの「何が何でも勝たなきゃいけないわけじゃない」環境が、監督含めた管理職を寛容にし、選手を長期的視点を持てるようにしている。


皮肉な話ですよねぇ~。


でも、これを知っているか知っていないかで、人を育てる力がぐんと変わります。


組織運営も子育ても、要求は高く(期待は大きく)、支援は厚くでいきましょう!


それでは~
バンヒロ

2017年10月3日火曜日

給食を残さず食べるように指導することのデメリット


こんにちは。メンタルコーチの伴です!


給食問題がニュースを賑わせていますね。味は百歩譲ってしょうがいないとしても、髪や虫などの異物の混入というのは、子供の健康に関わってきちゃうので、その安全だけは最低ラインとして守ってほしいですね。


そんな中で、一昨日チラッと見た番組でまずい給食を残させていいのか、という議論が巻き起こっていました。


無理に食べさせようとして、子供が戻してしまうという例が多く出てきていることを挙げて、そこまでする必要があるのかという主張と、忍耐やマナー(給食が配膳されるまでに関わった人々への感謝の気持ち含む)を教えるためにも最後まで食べさせるのが食育なんだという主張。


外出の時間だったので、最後までしっかり見れませんでしたが、すごく興味深い内容だなと思いました。


パフォーマンス心理学の観点から、忍耐力を小分けにしながら、この問題について考えていきます。


まず、前提として、誰のための議論なのか、主張なのかを明確にする必要がありますよね。


番組上で、「自分の頃の給食は不味かったが、みんな残さず食べされれてた。そうやって、我慢強さを学んだんだ」という主張が数度出てきていましたが、この言い方だと自分のやり方を押し付けとも取られてしまう可能性があるなと。


この議論は、子供の体力的、心理的な成長とにとって何がベストなのか、を見い出すためにしてほしいなと感じました。


この投稿では、子供の心理的な成長のみにフォーカスしていきます。



お断りしておくと、この投稿は教育方針はこうあるべきということを伝える目的ではなく、人の成長のために必要な要素をお伝えするものです。

そもそも忍耐力って何なんでしょうか。そして、そのどんな忍耐力がこれからの世の中で要求されていくのでしょうか。


忍耐力といっても、複数の種類があるように思います。


これ、アメリカでパフォーマンス心理学を学んでいる時にすごく混乱したのですが、英語では忍耐力に相当する言葉が3つあります。


Endurance(我慢強さ)、Perseverance(根気強さ)、 Resilience(心理的な回復力)

Endurance


我慢強さ。根気が努力の積み重ねを指すのに対し、これは耐える、我慢するという行動に重点。



Perseverance


根気強さ。目標に向かって、努力を重ねていく力を指します。



Resilience


心理的回復力のこと。なにか辛い出来事に直面した際に、素早く立ち直れる力のこと。


これのどれを育ませたいのかということで、主張は少し異なってくるように思います。


例えば、終身雇用が当然の世の中では、一度入ったら会社を辞める選択肢はデメリットのほうが多い世の中では、①我慢強さがとても重要になってくるでしょう。耐え忍ぶことのメリットや意義が大きい。その中で、この力がないと生きにくい世の中になってしまうのではないでしょうか。


逆に、会社を辞めるという行動が自身に合った仕事を見つける手段という捉え方広まっている世の中(例えばアメリカ)では、①の我慢強さはあまり評価されません。②のなりたいじぶんになるための根気強さ、③の逆境も素早く乗り越える回復力ほど重要視されます。アメリカの大学院の授業でも、PerseveranceResilienceがよく議論されるのに対し、Enduranceは一切出てきませんでした。


心理的回復力でいうと、災害や恐慌など起こる可能性が高い世の中ではとても重要なスキルと言われています。心理的回復力が高い人は、起こってしまったことを認め、理解し、その状況下でどうすべきかという視点に素早く切り替え、必要なアクションを取り始めることができるというのです (Achor, 2013)


給食の話に戻りますが、番組内で言われていた不味くても、食が細くても、最後まで食べきらせるべき、という主張のポイントは、①の我慢強さを育てるということなんだと理解します。


主張の意図はわかりました。では、無理にでも食べさせるしつけによるデメリットとは何なのでしょうか?


無理強いすることで、給食または特定の食材がさらに嫌いになる可能性がある(トラウマ化)こともさることながら、最も重要視したいのは、セルフエスティーム(自尊心)を損なうことです。


セルフエスティーム=自尊心、自分は価値がある人間だと思う感情(誰でも持っている感情です)


これは心の成長において、最も重要な要素です。長年の研究では、セルフエスティームが高い人は、何かを成し遂げる可能性が高いリーダーシップを取れる周囲から受け入れられやすい(Baumeister, 1997; Bednar & Peterson, 1995; Robins et al., 2008; Swann et al., 2007)といった利益により、結果幸福感が高まりやすい(Baumeister et al., 2003)とされています。


セルフエスティームは、周り(両親、先生、友達含む全ての人)との会話や比較で形成されていきます。


給食を例にすると、周りよりも食が細い、好き嫌いが多い、食べるのが遅いといった比較や、先生に「最後まで食べなさい」とみんなが終わっているのに居残りで食べさせられる状況に対し、子供は「自分はダメな子なんだ」と評価をくだしてしまう可能性があります。

この本人による自身への評価が、セルフエスティームを下げる原因となり得ます。


人の成長は日々の全てのイベントとそれに対する本人の評価の積み重ねであり、この給食は一つの毎日起こるイベントかもしれません。

が、あえてこの件(無理やり食べさせるしつけ)から判断するのであれば、セルフエスティームを下げるリスクを取って、我慢強さや、マナーを鍛えるかどうか、がポイントなのかなと思います。


教育方針は各家庭、学校で異なって然るべきですので、方針はこうあるべきなんてなんて言うつもりはありませんが、子供の成長を考えるなら、自尊心を傷つけない方法で給食に携わった方々への感謝やマナー、栄養学など必要なことを教えてほしいなと思います。
(しつけ、叱責が必要ないというわけではないです。)

ここからは、私個人の意見ですが。我慢強さだけで言えば、セルエスティームを下げてまで、獲得する必要があるものではないのではないかと思います。

働き方革命が謳われ始めた昨今から鑑み、10-20年後にはさらに自由な仕事環境になっていることが容易に想像できます。


そんな環境では、与えられ場所で与えられた職務を我慢しながら全うする力よりも、リーダーシップなどの率先力(セルエスティームが大きな影響を与える)のほうがよほど重要だと考えるからです。
(違う意見の方も多くいると思います。そうであるべきだとも思います)


子供の食事が体力的な成長の妨げにならない範囲であれば、無理強いはしないほうがいい。

その代わり、子供たちには食事をバランスよく食べることによる本人へのメリット(食べないことのデメリット)を理解してもらう。

そして、いつも食べられないものを食べたり、残さず食べられたときには褒めてあげることで、セルフエスティームを育みながら、食育(マナー含む)も目指す、これが理想なのじゃないでしょうか。

どういう子供を育てたいのか。それを決めてから、どういう教育方針にすべきか、コミュニケーションを取っていくのかとステップであれば、その番組もより有意義な議論になったのかなと感じました。


再度言いますが、子供たちにとってベストな教育方針が何かということは、僕にはわかりません。伝えたかったのは、どのような教育方針であれ、私は(僕は)ダメな子なんだ、という想いを持たせてほしくないということです。

直近のセミナーでも、部下を育てる会話術をテーマにしました。このテーマの中心もやはりセルフエスティームを下げないということでした。御好評をいただいたので、セルフエスティームを意識したコミュニケーション術は定期的に広めていきます(^^)/


それでは~
バンヒロ