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2019年1月30日水曜日

大阪なおみ選手の全豪優勝を可能にしたメンタルスキル

大坂なおみ選手、やってくれました!

全米オープン優勝の快挙に続き、全豪オープン優勝&アジア勢初の世界ランク1位。

テニス界、スポーツ界のみならず、日本全体に勇気と感動を与えてくれました!

試合を見ていた人は、2セット目をクビトバ選手が取った時に、嫌な流れを感じた人は多かったと思います。

私もライブで観ていましたが、大坂選手が3つのチャンピオンシップポイントを逃し、セットを取られた時は、まずい…と思いました。

しかし、タオルで顔を覆いながら、トイレブレークで室内に入った後、自分らしさを取り戻し、素晴らしいプレーで優勝を果たしました。

そこで気になったのは、

ブレーク中にどんなことを行い、あの状態から気持ちを整えたのか?

でした。

ということで、今回は大坂選手のインタビュー回答から、フラストレーションを対処するメンタルスキルに迫っていきたいと思います。


大阪選手の思考プロセスを紐解く
プレスカンファレンス(試合後の記者会見)でとある記者が、

「2セット目取られた後、どのように気持ちを落ち着けて、パフォーマンスを発揮したのか?」と聞いてくれました。ナイス質問!

大坂選手の回答は下記でした。

“I just thought to myself that this is my second time playing in the final. I can’t really act entitled to be playing against one of the best players in the world and to lose a set, and suddenly think that I’m so much better than her isn’t a possibility. I wanted to enjoy my time here. Last year, I lost in the fourth round and now this year was in the final so I wanted to be happy about that.”

「私にとっては、これが(グランドスラムでの)決勝は2回目。決勝で世界のトップ選手と戦うことが当たり前のように振る舞ってはいけないし、セットを失うことだってあると思った。そして、私が彼女より断然うまいなんてことはありえないと考えた。だから、この場を楽しもうと思った。去年は4回戦で負けてしまったが、今年は決勝まで来た。だから、その事実を幸せに感じたいと思った。」

この思考のプロセスにより、

(1)チャンピオンシップポイントを逃したり、セットを取られたイライラをコントロールし、
(2)置かれた状況への感謝や挑戦を楽しもうという感情を作り出すことができました。


リフレーミングと言われるメンタルスキル
(1)から解説していきたいと思います。

フラストレーションとは、平たく言えば、期待と現状の差から生まれます。


2セット目取れるはず(期待)だったのに、ポイントを逃し、逆にセットを取られてしまった(現状)。

期待通りに進まなかったことで、イライラという感情が出ていたわけです。

上述の記者への回答から、大坂選手はその期待が本当に正しかったのかと?と自分の思考にチャレンジしたことが伺えますよね。

世界トップの選手と戦っているわけで、自分が彼女より実力的に断然上で、2セット連取で勝つことを期待すること自体が正しくないのではないか?

「私が彼女より断然うまいなんてことはありえないと考えた。」というこの新しい考え方が、過度な期待を下げ、セットを奪われた現状を受け入れることに繋がったと考えられます。

つまり、フラストレーションを見事にコントロールしたのです。

フラストレーションという感情を生んでいる自分の思考に気づき、それが本当に正しいのかを検討し、望ましい思考に変化させたのですね。

この思考プロセスを、心理学用語では、リフレーミングと言います。

これを決勝の舞台で、しかも、あの短時間で冷静におこなったのですね。素晴らしいの一言!


捉え方が感情を生み出す
さらにもう一つの心理スキルも。(2)について解説します。

「この場を楽しもうと思った。去年は4回戦で負けてしまったが、今年は決勝まで来た。だから、その事実を幸せに感じたいと思った。」

この言葉からも、今置かれた状況を前向きに捉えようという大坂選手の意識が伺えますよね。

感情は、目の前の状況そのものがつくっているのではなく、捉え方に沿って生まれます(下の図の通り)。


逆に言えば、捉え方を意図的に変化させることで、出てくる感情を調整することができます。

昨年から大坂選手は「楽しむ」という言葉を多用しています。

勝ち負けがどうでも良いという意味ではなく、自分のテニスを存分に発揮するために、その場を楽しみたいのだと思います。

急がば回れ、みたいな見解をパラドックス(逆説)というのですが。

スポーツ心理学で確認されている最も有名なパラドックスが、「勝ちたければ、勝ちを意識するな」です。

美空ひばりさんの“柔”という歌の歌いだしで、「勝つと思うな 思えば負けよ」という歌詞もありますが()

勝ち負けに囚われるほどに、失敗に対する恐れが増長し、身体が硬直するなどしてしまう。

大坂なおみ選手の楽しむ姿勢は、ハイパフォーマンスを引き出すうえで、理にかなっていると言えます。


メンタルタフネス
プレッシャー環境下で、自分のやるべきことに意識を没頭させる能力を“メンタルタフネス”と呼びます。

全豪の決勝、嫌な流れで追いつかれての1セットオール。勝ちを意識するなというほうが難しい状況です。

大阪なおみ選手は、過度な期待を下げること、そして、自分が置かれている状況のポジティブな側面に意識を向けることで、自分がやるべきことに見事に意識を没頭させることに成功させました。

上述のような画面に映らないメンタルスキルに加えて、

ミスの後、相手に背を向け、気持ちを切り替える姿や、リターン前にセルフトーク(自分への声掛け)と同時に軽いガッツポーズを作るといったメンタルスキルを多用していることが伺えます。

技術や体力同様に、心理もトレーニングすることによって、向上させられるものです。

さらに詳しく知りたい方は!

下記セミナーにて、様々なアスリートの例をご紹介しながら、説明していきます。

「金メダリストに学ぶ!ポテンシャルを発揮するためのメンタルトレーニング」
日時:32日(土)18:15-20:45

ご参加お待ちしています(^^)

それでは!
ばん

2018年2月26日月曜日

あなたの“成功”に対する考え方が周りの人の行動を変える

こんにちは。メンタルコーチの伴です。


平昌オリンピックが閉幕しましたね。日々の楽しみが一つ減ります



いやぁ~しかし、全ての日本選手が素晴らしい活躍を見せてくれました。



メダルを獲得された選手たちが称賛されるのはもちろんですが、メダルに届かなかったもののオリンピックという大舞台で自己ベストを出した選手、出すために全力を尽くした選手たちにも惜しみない称賛が与えられてほしいなと願います。



称賛。評価。



実はここに実力発揮の環境づくりのポイントが秘められています。



評価とは、「その行動は望ましいのでを続けてほしいんですよ」というメッセージであり、その裏には、評価する側の成功に対する考え方が潜んでおります。



評価には、結果にするものとプロセス(行動)にするものがありますよね。



結果で評価するというのは、結果を得ることこそが成功という考えの表れであり、「あなたは望ましい結果を出したので、素晴らしいです」という風に捉えられます。



結果はわかりやすく、かつ公平に評価するために持ってこいの指標であります。



ただ、結果だけで評価される環境で育つまたは身を置くと、成功=良い結果を出すこと(スポーツで言えば勝利、ビジネスで言えば利益、学業で言えばテストの点数)という考えが身に付きやすくなります。



人には、人に影響を与えたい、人の役に立ちたい(関係性)という基本的な心理ニーズが備わっており、自分自身で確固たる評価軸がない限りは、置かれた環境の評価基準は大きな関心事であるからです(Deci & Ryan, 1985, 1991, 2000)



しかしながら、結果というのは、個人(やチーム)が完全にコントロール出来るものではありません。



大会で勝てる見込みが限りなく100%に近いアスリートがいたとしても、100%の確証を持つことはできません。


有能なビジネスパーソンでも、思い通りの利益を上げることはできませんし、どれだけ優秀な学生でも、受験の前に100%合格できる確証を持つことはできません。



結果で評価するというのは、この“不確定さ”にも責任を負わせるということです。



目標としている結果が明確で現実的あれば、そのような評価制度でも、短期的には意欲は上げられます。


しかし、その目標が困難であったり、期待が大きくなればなるほど、失敗に対する恐れが高まり、そのタスク(スポーツ、仕事、勉強など)に対する意欲は下がり始めます。


この図☟で言えば、左に移動します(右に行けば行くほど意欲が高まる)。


実力発揮の基本として、“結果はプロセス(行動)の副産物”というものがあります。



完全にコントロールできるのは自分の行動のみであり、結果を望むならそれに相応しい行動を起こすべしという考え方です。



実力が発揮されやすい状態とは、やるべきこと(プロセス)に意識が投下されている状態であり、努力や成長を評価されるシステムこそが、個人がプロセスに集中できる環境づくりに重要な役割を果たします。



アスリート、社員、子供に望ましい結果への行動意欲を高めてほしいのであれば、評価する側が下記の考え方の持つことが必要です。



1.結果は重要な目標であるが、最も重要な目的ではない。


2.勝ち負け(ビジネスで言えば契約受注逸注、勉学で言えば受験合格不合格んど)は結果によって決まるが、成功失敗は結果によって決まるものではない。


3.成功とは、目標に向かって行った努力やそれによる進歩である。結果が伴わなかったとしても、目標に向かって全力を尽くしたのであれば、決して失敗ではない。


4.負け=失敗ではない。負けること(受注を逃す、受験不合格など)が、失敗であったり、人間として価値がないことの証明ではない。


この考え方に基づく評価がなされる環境が、この環境下にいる個人の失敗に対する恐れを下げ、タスクに対する意欲やパフォーマンスの質を高めることが研究で明らかになっています(Smith, Smoll & Passer, 2002)



つまり、指導者、リーダー、親御さんなどの成功に対する考え方が、アスリート、同僚、子供の実力発揮や努力量に大きく影響しているのです。



ちなみに、アメリカでは、30年を超す長年の研究を基に作られたCoach Effectiveness Training(CET)という組織的なナショナルアスリート育成プログラムがあるのですが、このプログラムの基礎となったのが、上述の考え方であります。



私も講習をさせていただくときには、この考え方を取り入れています。



例えば、中学生や高校生に対して講習を行う際は、必ず講習の冒頭に、発言をすること自体がクラスへの大きな貢献であること、正解不正解は大きな問題ではないこと、そして、授業の最後に最も授業に貢献してくれた人3名を表彰すること(発言してくれるたびにチョコをあげ、授業の最後にチョコを一番多くもらった人が授業に最も貢献した人)を、伝えるようにしています。



また発言してくれた時に、その行動を後悔させないような雰囲気づくりを忘れないことも重要です。



素直な中・高校生の爆発力はすごくてですね(笑)失敗に対する恐れをなくしてあげると、ものすごい数を発言してくれるようになります。先日の3時間の講習では、60個のチョコレートがなくなるほどでした。



結果を求めることだけではなく、彼らが唯一コントロールできるもの=行動(努力)に対して、しっかり評価してあげる評価制度づくりが重要なんですね。



このアプローチは未成年だけではなく、大人にも有効であることがわかっています。気を付けなくてはいけないのは、大人相手に初歩的なことで褒めたりするとやぶ蛇になりますので、評価する内容、褒め方には気を付けなくてはなりませんけどね(Smith & Johnson, 1990)



この理論で言えば、オリンピック後の今、メダリストばかりを称賛するのではなく、自己ベストを出した選手や結果に関係なくオリンピック出場まで上り詰め、大舞台で結果に向かって最善を尽くした努力にも平等に注目が集まれば、もう少し日本人選手たちが結果ではなく結果へのプロセスに意識が向けられるようになるはずです。



まぁ理想論ですが。。。微力ながら、日本人アスリートの実力発揮ができる環境づくりに貢献する投稿をしてみました


以上、周りの成功に対する考え方(=評価)が、その人の努力量に大きく影響するというお話でした。


なお、


次回セミナーは、“大舞台で結果を出す人出さない人のメンタルスキル”を予定しています。


3月18日(日)10-12時@京急蒲田。


ご興味ある方下記までメールください。


ban.seminar@gmail.com



最後まで読んでいただき、ありがとうございました!(^^)!


それでは~
バン