11月11日に大谷翔平選手が記者会見で、海外挑戦を正式表明しました。
1時間程度の会見全て観ましたが、大谷選手がなぜここまでの選手になれたのかが、よくわかる会見でした。
大谷選手の回答から垣間見る考え方を、心理学のGrowth Mindsetという理論に基づいて説明していきますね(^^)
1.大谷選手が目指していることは何か?
記者会見で大谷選手はまっすぐこう答えました。
「ナンバーワンの選手になりたい」
このナンバーワンとは世界一のこと。
やはり超一流の選手は規模の大きな夢を持っているわけです。
この夢の実現のために、「MLB(メジャーリーグ)を選択するのは自然のこと」と言っていました。
社会学習理論というものがあります(Bandura & Walter, 1963, 1977)。
生活を送る中で、たくさんの情報を見聞きし、ある程度自分の出来ることの枠組み(自信)を作っていきます。
小学生の時文集などで大きな夢を描くも、歳を重ねるごとに目標は控えめになりがちななのはこのせいです。
記者会見の場で、大きな夢をまっすぐな目で述べられる大谷選手に、揺るぎない自信を感じ取りました。
2.なぜこのタイミングでのMLB挑戦か?
この質問には前提があります。
昨年合意されたMLBの新労使協定で25歳未満の国外選手と契約する際に使える金額が抑えられ、大谷は最大350万ドル(約4億円)程度にとどまると予想されています。
あと2年待てば、この協定の対象外となり、大型契約可能となるのに、なぜ今?という疑問が上がったのです。
この質問に対する大谷選手の回答は、「自分はまだまだ不完全な選手と認識。だから、早く挑戦したかった。」
これに対し、他の記者から、「完全な選手になってから、挑戦するという発想にはならなかったのですか?」との質問。
大谷選手は「(どこまでやれるのかという)自分に対する興味、じゃないかと」と回答していました。
この記者と大谷選手会話のずれは、優先順位なんですね。
このブログでよく出るGrowth mindsetとFixed mindsetの違い。
記者の方は、契約金額や結果を優先に考えているため、
なんで今なの?あと2年待てば、もっとお金もらえるのに。
もっと完成されてから行かないの?そっちのほうが結果残せるだろうに。
でも、大谷選手は、世界一の選手になるという目的達成には、どの判断がベストなのかを考えているわけです。
成長を優先順位に置いた考え方をGrowth mindsetと呼び、自身がどれだけ有能なのかをアピールすることを優先する考え方をFixed mindsetと言います(Dweck, 2006)。
パフォーマンス発揮の観点から言うと、Growth mindsetはとても有効です。
ワールドシリーズで優勝したい、サイヤング賞のタイトルを取りたい…こういうものはあくまで目標であって、目的ではありません。
なぜ優勝したいのか、なぜタイトルを取りたいのか…この探求から出てくる回答が目的であり、やる気の源泉です。
この目的が外発的要因(お金や名声などの報酬や罰則回避)に結び付けられるよりも、自分が好きだからやる、それが良い人生だからやるといった内発的要因に結びつけることが、強く持続するやる気になり、結果として成功しやすくなります。
大谷選手で言うと、世界一の選手になりたい、というのが内発的やる気の源泉です。
これの達成が自分にとっての幸せな人生であり、諦められない夢となっていく。
この夢の実現のために必要な判断が、今のMLB挑戦だったということなのでしょう。
3.会見の節々に出た大谷選手の謙虚さ
このマインドセットは、大谷選手の謙虚な行動にも繋がってきています。
ある意味記者泣かせの会見だったかもしれませんね。
ワールドシリーズ優勝目指します!サイヤング賞狙います!
そういう発言をしてくれたほうが、記事にインパクトが出やすいでしょうが、大谷選手は、数値的な目標に対し、「自分はまだ数字を語れるレベル、環境にいない」という発言に終始。
この回答からも、目的ありきの目標設定を行っている姿勢がわかります。
「世界一の選手になりたい」
この目的に向かい、どのような目標設定が正しいのか。
それは実際にチームが決まってみないとわからないという姿勢。
謙虚さは自信にリンクされ考えられがちなのですが、それだけではありません。
どこに優先順位を置いているのかがポイントなのです。
短期視点で見ている人にとっては、その場で自身の有能さをアピールできるかどうかが重要事項になります(Fixed mindset)。
一番手っ取り早いのは、口にすることであり、しばしば周りから自慢と捉えられることもあります。
かたや、長期視点で見ている人は、その場だけではなく、自分の努力の結果で示そうとします(Growth mindset)。
実際に大谷選手も周りからの評価を気にしていないわけではありません。
「野球は記録で評価されやすい側面もある。二刀流ではなく、どちらか一本に絞ることで、結果を残しやすくできる選択肢もあるように思うが?」という質問に対し、大谷選手はこう答えました。
「すごく難しい質問です。この点に関しては、自分に自問自答しながら、やってきた。人の価値観はそれぞれ。記録で評価される部分はあると認識した上で、やってきた二刀流は自分の軸だけいえば、プラスになっている。周りにとってどうかという視点も含め自問自答してきたが、少なくとも自分だけの軸で言えば、満足している」
自分の価値観と周りの評価との折り合いを自問自答してきた葛藤が表れていますよね。
世界一の選手の定義についても、「ファンが、大谷が世界一の選手だ、と言ってくれるのが一番」と言っていました。
そのためには、口で「自分はすごいんだ」と言うのはなく、自分が成長して、そのプレーを見せることを選択しているのです。
この選択が、謙虚という行動に繋がっているわけなんです。
こんな考え方を出来るのは大谷選手だからと思われるかもしれませんが、このマインドセットは生まれ持った性格ではなく、後天的に獲得できるものであります。
誰でも、いつからでも得られるものなのです。
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それでは~
バンヒロ