2018年5月22日火曜日

大谷選手のような運動能力の高い子どもの育て方

こんにちは。メンタルコーチの伴です。


大谷選手の活躍すばらしいですね!


5年ほど前のインタビューでの本人の言葉「期待は応えるものではなく、超えるもの」の通り、連日驚かせてくれています。


大谷選手といえば、打つ、投げる、走る…全てにおいて超一流の選手ですが、どうすれば大谷選手のように運動能力を育むことが出来るのでしょうか。


体格、運動センス(スキル獲得のスピード)など、確かに持って生まれたものの影響というものはあるのですが、後天的に育まれる運動能力も先天的な土台以上に重要だという研究も多々あります。


(1)運動能力を高めるために必要なこと(理論編)、(2)運動能力を促進する6つのポイント(実践編)、の2つに分けて書いていきます。


そもそも“運動能力”とは、走る、跳ぶ、投げる、姿勢を保つ、捕るなどの能力のことを指しますが、多くの人が運動能力を高めるためには、体操や器械運動など特定の運動に特化したほうが良いと考えています。


実はそうではありません。


幼稚園/保育園で運動指導を行っている回数(一週間)と子どもの運動能力の因果関係を測った研究があります。


幼稚園/保育園を下記のようなグループに分け、それぞれのグループの園にいる子ども達の運動能力(25m走、立ち幅跳び、ボール投げ、体支持持続時間、両足連続跳び越し、捕球の総合評価)を比較しました。


①運動指導が週0回の園
②週16回の園
③週7回の園

※①の園は運動指導を行っていないだけで、子どもたちが運動していないというわけではありません。自由に遊んでいる(運動している)時間も当然あります。


そりゃ③でしょと思う方も多いでしょうが、予想に反して、運動能力が高かったのは、①、②、③の順でした(①の子どもたちが一番運動能力が高い)。


なぜでしょうか?


このような研究は複数あるのですが、一貫して指摘されているのは、特定の運動の上達を目指した指導は、動きのパターンが固定されてしまいがちになり、運動能力向上には繋がりにくいことです(特定の動きの質=技術は、当然向上されていきます)。


乳幼児期(06歳)、児童期(712歳)は神経系(脳、脊髄、中枢神経、末梢神経)が急激に発達する時期(5歳で成人の8割程度まで発達)であり、それに伴って“全身の調整能力”(=体を思い通りに動かす能力)が培われていきます。


この能力を獲得するために必要なことは、ずばり“多様な運動経験(動き)”なのです。


①のグループに属する子どもたちは、特定されていない様々な遊びを通して、自発的に多様な動きを経験していきます。


これにより知らず知らずのうちに、調整力を身に付け、そしてそれが、運動能力に繋がっていくのです。
(※運動指導が必要ないということではありません。そもそも運動の機会がない子どもにとっては、運動の機会創出になるでしょうし、指導者付き添いの元、安全に運動が出来るメリットもあります。体操やフィギュアスケートなど、小さい頃から積み重ねられた技術が差を生むスポーツの場合は、早い段階からの集中指導が望ましいと言われています。)


アメリカでは、中学校または高校までは(学校によって異なる)極力多数のスポーツをやらせるサンプリングという文化があります。


私がメンタルトレーニング指導を行っていたコロラド州デンバーの高校でも、春夏秋冬のシーズンによって部活が変わるシステムが採用されていました。


多様な運動経験により、運動能力を高める狙いがあるのだそうですが、たまにプロスポーツ選手が引退後、別種目のプロ選手になる(マイケルジョーダンもバスケ引退後、プロ野球に挑戦した)なんてことが起こるのも、こういう文化から来ているのかもしれませんね。


多様な運動経験を増やす子育て実践方法は次回のブログで書きます。


最後に運動がもたらす子どもの性格への影響について、紹介して終わりにしたいと思います。


結論から言うと、運動を多く行っている子どもは、運動への積極性を高める(運動好きになる)のみならず、自己実現意欲や向社会的行動(反社会的行動の反対語で、見返りを期待せずに他者の役に立つような行動のこと)が増加することが確認されています。


なぜか? 


スポーツを通じて、目標に向かって突き進む経験(ゴールに向かって筋道を立てる経験、プランを実行する経験、挫折や達成経験など)により、その後の人生においても自己実現意欲が高まる傾向にあるのです。


さらに、目標に向かって走る過程で、自己主張ばかりではなく、相手の立場に立って物事を見る視点やコミュニケーション能力を獲得していくこと。また、チームとして何かを成し遂げた時の喜びを通して、他者の喜びのために行う行動がどれだけ自分の喜びに繋がるのかを体感していきます。それにより、人生を通じて向社会的行動が増加することが確認されています。


しかーし、そのスポーツが違う目的のために使われることもしばしばあります。


「何をしてでも勝て!」という勝利至上主義の考え方は、上述のような人格形成の妨げになる可能性があります。



無論、スポーツにおいて勝ち負けは重要です。


勝ちを目指して全力を尽くすことで、成長が促されるからです。


ただし、勝ちを目的にしてしまうと、選手たちの意識は、技術・体力・心理・知力の向上(プロセス)ではなく、結果に集中され、成長のヒントが見逃されてしまうからです。
(成長とは、なぜうまくいったか、なぜうまく行かなかったかの追及・改善により促されます。勝利至上主義のチームでは、負け=失敗となり、選手としては認めたくない現実と捉えられがちになってしまうのです。負け=成長の糧であるにもかかわらず。)


特に著しく発達する小中高校生には、成長が主眼である環境で自分の可能性に挑戦していってほしいなと願います。


話がそれてしまいましたが、実践方法にご興味あるかたは、次回のブログ「子どもの運動能力の成長を促す5つのアクション」も是非読んでくださいね。


それでは~
ばん