2017年10月3日火曜日

給食を残さず食べるように指導することのデメリット


こんにちは。メンタルコーチの伴です!


給食問題がニュースを賑わせていますね。味は百歩譲ってしょうがいないとしても、髪や虫などの異物の混入というのは、子供の健康に関わってきちゃうので、その安全だけは最低ラインとして守ってほしいですね。


そんな中で、一昨日チラッと見た番組でまずい給食を残させていいのか、という議論が巻き起こっていました。


無理に食べさせようとして、子供が戻してしまうという例が多く出てきていることを挙げて、そこまでする必要があるのかという主張と、忍耐やマナー(給食が配膳されるまでに関わった人々への感謝の気持ち含む)を教えるためにも最後まで食べさせるのが食育なんだという主張。


外出の時間だったので、最後までしっかり見れませんでしたが、すごく興味深い内容だなと思いました。


パフォーマンス心理学の観点から、忍耐力を小分けにしながら、この問題について考えていきます。


まず、前提として、誰のための議論なのか、主張なのかを明確にする必要がありますよね。


番組上で、「自分の頃の給食は不味かったが、みんな残さず食べされれてた。そうやって、我慢強さを学んだんだ」という主張が数度出てきていましたが、この言い方だと自分のやり方を押し付けとも取られてしまう可能性があるなと。


この議論は、子供の体力的、心理的な成長とにとって何がベストなのか、を見い出すためにしてほしいなと感じました。


この投稿では、子供の心理的な成長のみにフォーカスしていきます。



お断りしておくと、この投稿は教育方針はこうあるべきということを伝える目的ではなく、人の成長のために必要な要素をお伝えするものです。

そもそも忍耐力って何なんでしょうか。そして、そのどんな忍耐力がこれからの世の中で要求されていくのでしょうか。


忍耐力といっても、複数の種類があるように思います。


これ、アメリカでパフォーマンス心理学を学んでいる時にすごく混乱したのですが、英語では忍耐力に相当する言葉が3つあります。


Endurance(我慢強さ)、Perseverance(根気強さ)、 Resilience(心理的な回復力)

Endurance


我慢強さ。根気が努力の積み重ねを指すのに対し、これは耐える、我慢するという行動に重点。



Perseverance


根気強さ。目標に向かって、努力を重ねていく力を指します。



Resilience


心理的回復力のこと。なにか辛い出来事に直面した際に、素早く立ち直れる力のこと。


これのどれを育ませたいのかということで、主張は少し異なってくるように思います。


例えば、終身雇用が当然の世の中では、一度入ったら会社を辞める選択肢はデメリットのほうが多い世の中では、①我慢強さがとても重要になってくるでしょう。耐え忍ぶことのメリットや意義が大きい。その中で、この力がないと生きにくい世の中になってしまうのではないでしょうか。


逆に、会社を辞めるという行動が自身に合った仕事を見つける手段という捉え方広まっている世の中(例えばアメリカ)では、①の我慢強さはあまり評価されません。②のなりたいじぶんになるための根気強さ、③の逆境も素早く乗り越える回復力ほど重要視されます。アメリカの大学院の授業でも、PerseveranceResilienceがよく議論されるのに対し、Enduranceは一切出てきませんでした。


心理的回復力でいうと、災害や恐慌など起こる可能性が高い世の中ではとても重要なスキルと言われています。心理的回復力が高い人は、起こってしまったことを認め、理解し、その状況下でどうすべきかという視点に素早く切り替え、必要なアクションを取り始めることができるというのです (Achor, 2013)


給食の話に戻りますが、番組内で言われていた不味くても、食が細くても、最後まで食べきらせるべき、という主張のポイントは、①の我慢強さを育てるということなんだと理解します。


主張の意図はわかりました。では、無理にでも食べさせるしつけによるデメリットとは何なのでしょうか?


無理強いすることで、給食または特定の食材がさらに嫌いになる可能性がある(トラウマ化)こともさることながら、最も重要視したいのは、セルフエスティーム(自尊心)を損なうことです。


セルフエスティーム=自尊心、自分は価値がある人間だと思う感情(誰でも持っている感情です)


これは心の成長において、最も重要な要素です。長年の研究では、セルフエスティームが高い人は、何かを成し遂げる可能性が高いリーダーシップを取れる周囲から受け入れられやすい(Baumeister, 1997; Bednar & Peterson, 1995; Robins et al., 2008; Swann et al., 2007)といった利益により、結果幸福感が高まりやすい(Baumeister et al., 2003)とされています。


セルフエスティームは、周り(両親、先生、友達含む全ての人)との会話や比較で形成されていきます。


給食を例にすると、周りよりも食が細い、好き嫌いが多い、食べるのが遅いといった比較や、先生に「最後まで食べなさい」とみんなが終わっているのに居残りで食べさせられる状況に対し、子供は「自分はダメな子なんだ」と評価をくだしてしまう可能性があります。

この本人による自身への評価が、セルフエスティームを下げる原因となり得ます。


人の成長は日々の全てのイベントとそれに対する本人の評価の積み重ねであり、この給食は一つの毎日起こるイベントかもしれません。

が、あえてこの件(無理やり食べさせるしつけ)から判断するのであれば、セルフエスティームを下げるリスクを取って、我慢強さや、マナーを鍛えるかどうか、がポイントなのかなと思います。


教育方針は各家庭、学校で異なって然るべきですので、方針はこうあるべきなんてなんて言うつもりはありませんが、子供の成長を考えるなら、自尊心を傷つけない方法で給食に携わった方々への感謝やマナー、栄養学など必要なことを教えてほしいなと思います。
(しつけ、叱責が必要ないというわけではないです。)

ここからは、私個人の意見ですが。我慢強さだけで言えば、セルエスティームを下げてまで、獲得する必要があるものではないのではないかと思います。

働き方革命が謳われ始めた昨今から鑑み、10-20年後にはさらに自由な仕事環境になっていることが容易に想像できます。


そんな環境では、与えられ場所で与えられた職務を我慢しながら全うする力よりも、リーダーシップなどの率先力(セルエスティームが大きな影響を与える)のほうがよほど重要だと考えるからです。
(違う意見の方も多くいると思います。そうであるべきだとも思います)


子供の食事が体力的な成長の妨げにならない範囲であれば、無理強いはしないほうがいい。

その代わり、子供たちには食事をバランスよく食べることによる本人へのメリット(食べないことのデメリット)を理解してもらう。

そして、いつも食べられないものを食べたり、残さず食べられたときには褒めてあげることで、セルフエスティームを育みながら、食育(マナー含む)も目指す、これが理想なのじゃないでしょうか。

どういう子供を育てたいのか。それを決めてから、どういう教育方針にすべきか、コミュニケーションを取っていくのかとステップであれば、その番組もより有意義な議論になったのかなと感じました。


再度言いますが、子供たちにとってベストな教育方針が何かということは、僕にはわかりません。伝えたかったのは、どのような教育方針であれ、私は(僕は)ダメな子なんだ、という想いを持たせてほしくないということです。

直近のセミナーでも、部下を育てる会話術をテーマにしました。このテーマの中心もやはりセルフエスティームを下げないということでした。御好評をいただいたので、セルフエスティームを意識したコミュニケーション術は定期的に広めていきます(^^)/


それでは~
バンヒロ

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