2017年11月14日火曜日

大谷選手がすごい選手たる理由

こんにちは。メンタルコーチの伴です!


11月11日に大谷翔平選手が記者会見で、海外挑戦を正式表明しました。


1時間程度の会見全て観ましたが、大谷選手がなぜここまでの選手になれたのかが、よくわかる会見でした。


大谷選手の回答から垣間見る考え方を、心理学のGrowth Mindsetという理論に基づいて説明していきますね(^^)


1.大谷選手が目指していることは何か?


記者会見で大谷選手はまっすぐこう答えました。


「ナンバーワンの選手になりたい」


このナンバーワンとは世界一のこと。


やはり超一流の選手は規模の大きな夢を持っているわけです。


この夢の実現のために、「MLB(メジャーリーグ)を選択するのは自然のこと」と言っていました。


社会学習理論というものがあります(Bandura & Walter, 1963, 1977)。


生活を送る中で、たくさんの情報を見聞きし、ある程度自分の出来ることの枠組み(自信)を作っていきます。


小学生の時文集などで大きな夢を描くも、歳を重ねるごとに目標は控えめになりがちななのはこのせいです。


記者会見の場で、大きな夢をまっすぐな目で述べられる大谷選手に、揺るぎない自信を感じ取りました。


2.なぜこのタイミングでのMLB挑戦か?


この質問には前提があります。


昨年合意されたMLBの新労使協定で25歳未満の国外選手と契約する際に使える金額が抑えられ、大谷は最大350万ドル(約4億円)程度にとどまると予想されています。


あと2年待てば、この協定の対象外となり、大型契約可能となるのに、なぜ今?という疑問が上がったのです。



この質問に対する大谷選手の回答は、「自分はまだまだ不完全な選手と認識。だから、早く挑戦したかった。」


これに対し、他の記者から、「完全な選手になってから、挑戦するという発想にはならなかったのですか?」との質問。


大谷選手は「(どこまでやれるのかという)自分に対する興味、じゃないかと」と回答していました。


この記者と大谷選手会話のずれは、優先順位なんですね。


このブログでよく出るGrowth mindsetFixed mindsetの違い。


記者の方は、契約金額や結果を優先に考えているため、


なんで今なの?あと2年待てば、もっとお金もらえるのに。


もっと完成されてから行かないの?そっちのほうが結果残せるだろうに。


でも、大谷選手は、世界一の選手になるという目的達成には、どの判断がベストなのかを考えているわけです。


成長を優先順位に置いた考え方をGrowth mindsetと呼び、自身がどれだけ有能なのかをアピールすることを優先する考え方をFixed mindsetと言います(Dweck, 2006)。


パフォーマンス発揮の観点から言うと、Growth mindsetはとても有効です。


ワールドシリーズで優勝したい、サイヤング賞のタイトルを取りたい…こういうものはあくまで目標であって、目的ではありません。


なぜ優勝したいのか、なぜタイトルを取りたいのか…この探求から出てくる回答が目的であり、やる気の源泉です。


この目的が外発的要因(お金や名声などの報酬や罰則回避)に結び付けられるよりも、自分が好きだからやる、それが良い人生だからやるといった内発的要因に結びつけることが、強く持続するやる気になり、結果として成功しやすくなります


大谷選手で言うと、世界一の選手になりたい、というのが内発的やる気の源泉です。


これの達成が自分にとっての幸せな人生であり、諦められない夢となっていく。


この夢の実現のために必要な判断が、今のMLB挑戦だったということなのでしょう。


3.会見の節々に出た大谷選手の謙虚さ


このマインドセットは、大谷選手の謙虚な行動にも繋がってきています。


ある意味記者泣かせの会見だったかもしれませんね。


ワールドシリーズ優勝目指します!サイヤング賞狙います!


そういう発言をしてくれたほうが、記事にインパクトが出やすいでしょうが、大谷選手は、数値的な目標に対し、「自分はまだ数字を語れるレベル、環境にいない」という発言に終始。


この回答からも、目的ありきの目標設定を行っている姿勢がわかります。


「世界一の選手になりたい」


この目的に向かい、どのような目標設定が正しいのか。


それは実際にチームが決まってみないとわからないという姿勢。


謙虚さは自信にリンクされ考えられがちなのですが、それだけではありません。


どこに優先順位を置いているのかがポイントなのです。


短期視点で見ている人にとっては、その場で自身の有能さをアピールできるかどうかが重要事項になります(Fixed mindset)。


一番手っ取り早いのは、口にすることであり、しばしば周りから自慢と捉えられることもあります。


かたや、長期視点で見ている人は、その場だけではなく、自分の努力の結果で示そうとします(Growth mindset)。


実際に大谷選手も周りからの評価を気にしていないわけではありません。


「野球は記録で評価されやすい側面もある。二刀流ではなく、どちらか一本に絞ることで、結果を残しやすくできる選択肢もあるように思うが?」という質問に対し、大谷選手はこう答えました。


「すごく難しい質問です。この点に関しては、自分に自問自答しながら、やってきた。人の価値観はそれぞれ。記録で評価される部分はあると認識した上で、やってきた二刀流は自分の軸だけいえば、プラスになっている。周りにとってどうかという視点も含め自問自答してきたが、少なくとも自分だけの軸で言えば、満足している」


自分の価値観と周りの評価との折り合いを自問自答してきた葛藤が表れていますよね。


世界一の選手の定義についても、「ファンが、大谷が世界一の選手だ、と言ってくれるのが一番」と言っていました。


そのためには、口で「自分はすごいんだ」と言うのはなく、自分が成長して、そのプレーを見せることを選択しているのです。


この選択が、謙虚という行動に繋がっているわけなんです。


こんな考え方を出来るのは大谷選手だからと思われるかもしれませんが、このマインドセットは生まれ持った性格ではなく、後天的に獲得できるものであります。


誰でも、いつからでも得られるものなのです。


11月26日のセミナー@京急蒲田では、マインドセットの獲得方法をテーマにしております。


ご興味があるかたは、下記メールアドレスまでお問い合わせください☆


ban.seminar@gmail.com


それでは~
バンヒロ

2017年11月11日土曜日

格上相手に活躍できる選手とそうじゃない選手のメンタル

 こんにちは。メンタルコーチの伴です!


今夜はサッカー、日本対ブラジルでした。


やはりブラジル強い!1-3でした。


サッカーは好きで良く見ているのですが、格上との対戦の時に活躍できる選手と格下との試合の時にだけ、活躍する選手がいるように思います。


もちろん技術や体力といった実力の差が最も大きな違いでしょうが、メンタル面の差もあります。


試合をやる限り、勝ちを目標にします(もちろん状況によって異なる場合もあります)。


相手が強ければ強いほど、勝ちという目標に対し、物理的にも心理的にも障害となります。


心理的な障害を乗り越えられる選手とそうじゃない選手の差は何か。


恐らく多くの方がその差は、“自信”だろうと思われるでしょう。


それも正しいです。


自信とは、望む結果が得られるかどうかに対する自身の目算です。


自信が高いということは、望む結果が得られると思っているわけです。


従い、自信が低い人よりも、相手が強いという障害を乗り越えられると信じ、行動に移せるのです。


ただ、自信の高さ以外にも、障害に立ち向かう姿勢に違いを生むメンタル要因があります。


それは、障害に対する捉え方です。


多くの人が、驚くかもしれませんが、この障害が高ければ高いほど、喜ぶ人がいます。


心理学の世界では、こういう人が持つマインドセットをGrowth Mindset(以下、成長マインドセット)と呼びます(Dweck, 2006)。


障害の高さが、自分の自信以上の場合、プレッシャーと呼ばれるストレス反応が出てきます。


成長マインドセットの人は、このプレッシャーを成長の糧だと捉えるのです。


自分のセミナーでは、例として孫悟空を用いたこともあります。


自分より強い相手と対峙した時、「ワクワクすっぞ」というのです。


この敵を倒す、つまり、この障害を乗り越えた先には、さらに強くなった自分がいるという考え方です。

これは、鳥山明ワールド内のみの話ではありません。


前田健太選手は、契約金額をどんなに買いたたかれようが、レベルの高いメジャーリーグで自分の力を伸ばしたいと、2年前にドジャースに移籍しました。


大谷翔平選手も、労使協定の関係で、契約金額の上限が低く設定されようが、メジャー挑戦を表明しました。


彼らの優先順位は、自身の成長なのです。


お金や名声ではないのです。


そういう人にとっては、相手が強いという障害は、自分を伸ばしてくれる成長の糧なのです。


逆に、お金や名声を優先する人にとってはどうでしょうか。


この試合で勝たないと、評価されない。


そういう風に捉えてしまうと、強い相手は邪魔な障害物でしかないわけです。


この差は、性格ではありません。


どこの視点から見ているかだけの差です。


なりたい自分という長期視点を考え続け、自分はこういう選手になるんだと明確なイメージを持っている選手は、目の前の評価に一喜一憂しないのです。


サッカー日本代表が若手の活躍でオーストラリアに勝利した時、控えに回っていた本田圭祐選手がインタビューで、「自分に危機感を与えてくれた若手に感謝」と言っていました。


悔しかったでしょうが、その局面さえもどう自分の成長につなげるかという視点でみている人の言葉だな、と思いました。


「なりたい自分をイメージする力」


これが格上との対戦で活躍できる選手かそうでないかの違いを生むというお話。


ちなみに、11月26日(日)の私のセミナーのメインテーマは、成長マインドセットを育む方法です。


ご興味ある人は是非!


それでは~
バンヒロ

2017年10月31日火曜日

自分の人生を好きになること


今日兵庫で、寝ていた夫を刺し殺す事件があった。奥さまが朝旦那さんを起こしに行って、旦那と喧嘩になり、腹を刺したんだとか。


日々色々なニュースがあるが、つい考えてしまうのは、その現場にいた加害者、被害者の頭の中のこと。


どんな環境で生きてきたのか。


その日どんなことがあったのか。


そして、その事故が起こったとき、どんな感情が沸き起こっていたのか。


どうして抑えられなかったのか。


誰だって、良い人生を歩みたい。


良い人生に対する考え方、これが価値観だ。


これは人それぞれであって然るべき。


誰かに描いてもらうものではない。


自分の価値観に沿った生き方が出来ていない人は、理由もなくイライラしてしまう。


些細なことで怒りや憎しみスイッチが入ってしまう。


感情は意味があって出てくる。


多くの人が勝手に良くない感情と決めている怒り、不安、悲しみなども、喜び、興奮同様に理由があって出てきている。


その感情を深く深くひも解いてあげると、そういう感情は結局、「自分は幸せに生きたいのにその通りに生きられていない」という心の叫びなのだ。


こういう感情に目を向けて、根本を掘り下げると、自分の価値観が見えてくる。


自分はどう生きたいのか。


誰が決めたか、怒り、悲しみ、妬み、悔しさ…そういった感情はネガティブ感情と呼ばれる。


より良い人生に導いてくれるシグナルなのに。


長期的に見れば、そういう感情もポジティブな影響をもたらしてくれるのに。


感情が、なぜ出てきているのかという根源に目を向け続けてほしい。


事件の話に戻そう。


イラっと来て、刺すという行動に出ているのだろう。


きっと積もりに積もった怒りなんだろう。


でも、どんなに感情が積もろうが、行為をコントロール出来る人もいる。


出てきた感情を行動に出す人と出さない人の差。


人はこれを理性という。


理性とは、守りたいものなんだと思う。


家族や仲間との生活、趣味、自分の人生…。


大事なものがある人は、人のことを刺したりしない。


ニュースに出てくるような行動に走ってしまった人は、自分の人生を好きになれていないんじゃないか。


自分の人生を好きになるには、受け身ではだめ。自主性がいる。


自分が好きなことは何か。


幸せな人生って何か。


誰の役に立ちたいのか。


どうやって役に立ちたいのか。


なりたい自分像は何か。


なりたい自分像になるために活かせる強みは何か。


こういうことを探求する自主性がいる。


幸せは与えられるものじゃない。


周りが与えられるのは、それを考える環境ときっかけ。


こういうきっかけがあれば、人を殺めるような行動を移さなかったんじゃないだろうか。


殺人という行動だけではない。


子供の非行もそう。


子供に厳しい要求をしながらも、支援を惜しまない親の子供は非行に走る率が低いという研究がある。


これはどういうことか。


要求が高いとは期待が高いということ。


子供たちは期待に添いたいと、目の前の山を登りだす。


目の前の山は登ってみると意外とつらい。


挫折しそうになりながらも、周りの厚いサポートを糧に登りきる。


期待に応えられた!


また親から厳しい要求が来る。


「次はあの山を目指してみようか。」


登れるかなぁ。でも親の期待に応えたい。この山登れたのだから、あの山もいけるかもしれないしと、また登りだす。


辛くて、挫折しそうになるも、親からサポートがあり、頑張ってみる。


また登りきれた。


「自分は結構できるんだ。」


ここまで行けば、自分で走り出す。


自分の自信という枠の中で、なることの出来そうな最高の自分に向かって。


そして、また困難を乗り越えた経験が自信を高め、最高の自分はもっと大きいんじゃないかと思い始める。


自分は結構出来るんだのあたりから、もうこの子は自分の人生が好きになっている。


「自分は出来る」という思いがある子が、自分の将来の可能性を潰すような非行に走るとは考え難い。


この研究はそういうことを教えてくれているんだと理解した。


ストレスが猛威を振るう企業で、こういう話をすると、管理職になればなるほど、「なりたい自分像なんてないよー」という反応が来る。


別にそんな大それたことでなくていい。


①なんのために仕事しているのかという理由を、②自分が嬉しいと思う価値観に結び付けられれば、今まで敵だと思っていたストレスがスッと味方になる。


やる気には二つある。


お金や周りからの評価を得たいという外発的なものと、自分がやりたいからやるという内発的なもの。


外発的やる気による行動にはネガティブなストレスがつきまとう。


行動自体は好きじゃないけど、報酬のためにやる。これが望み通りに得られるかどうなのかに一喜一憂しなくてはならない。


コントロールできないことなのに。


お金や周りの評価は結果についてくる。


結果というのは、自分の行動の積み重ねにより訪れるものであるも、万全を尽くしても得られない時もある。


それがすごいストレスなのだ。


やりたくないことを報酬のためにやっているのに、その報酬が得られないときがあるというのは不条理だからだ。


内発的やる気による行動は、周りがどうあろうと関係ない。


自分が好きで、没頭してやっているのだ。


面白いことにやる気に沿ったこの行動は結果に繋がりやすい。


好きこそものの上手なれ、好きでやることは上達するため、結果が出る可能性が上がるからだ。


もし人の役に立ったと感じられた時に幸せだなと感じるのであれば、多くの人に感謝される自分になるということを目的にしてほしい。


人はみんな幸せになりたい。


誰に言われたわけでもなく、その幸せに向かって走り出す。


その道すがら、困難はあるだろうが、目的を思い出せば、その困難こそが、感謝される自分になるという目的達成の糧であることに気づく。


長いスパンでの目的意識を持てれば、目の前の困難は幸せな自分への近道のように見えてくる。



人を殺めてしまった人、非行に走る子供、ストレスに悩む社員…バラバラの境遇に見えるかもしれないが、みんな幸せになりたいという想いの反動から出ている行動や症状だと捉えている。



自身の人生に向き合い、長い視点を持ち、人生を好きになること。



メンタルコーチとして、人の心を勉強する者として、それぞれが自分の人生を好きになるサポートをしていきたい。

2017年10月27日金曜日

日本ハムから考える部下や子供の育て方

こんにちは。メンタルコーチの伴です。


昨日日本ハムが7社競合の末、清宮幸太郎選手を引き当てました。


日本ハムはくじ運が素晴らしい(''ω'')


過去のドラフトを見ると、ダルビッシュ、中田翔、斎藤佑樹、大谷翔平…そして今回の清宮幸太郎。


しかし、今回のブログで注目していきたいのは、運を引き寄せる方法ではなく(笑)、そのほとんどの選手を球界を代表する選手に育てる日本ハムの手腕です。


もちろん、素質が良い選手が集まっているという事実もあるでしょう。


ただ、それだけではなさそうなのです。


例えば、2008年にドラフト1位で巨人に入った大田泰示選手が昨年オフに日ハムに移籍、


巨人では8年間活躍できなかったにも拘らず、今年新天地でブレークした事実です。


自分が就活をしていたころは、やはり入社するなら自分が伸びる会社に入りたかった。


いつか自分の子供が就職するなら、子供が伸びる会社に入ってほしいと思う。


日ハムが持つ人を育てる秘訣が何なのか気になったので、調べてみました。横着してネットで。


事の真相はわかりませんが、一つこれか!という点がありました。


どうやら日ハムは、「何が何でも勝たなきゃいけない球団ではない」らしい。


日ハムファンが気分を悪くしたらごめんなさい。でも、そういう記事がありました。


これが本当だとしたら、栗山監督の采配の寛容さを頷けます。


この監督は、結果が出なくても、伸びると信じた選手を使い続ける。


これ理にかなっているんですね。


やり抜く力を持つ子供を育てる親を科学した研究があります(Steinburg, 2000)


まず、下記の通り支援有無と要求の高低の2軸で4つのタイプを分別(怠慢、寛容、独裁、賢明)。


そして、1万人を超える未成年に親の行動に関するアンケートを実施し、全ての親をこの4つに分類しました。


その結果、賢明な親(期待を高く保ちつつ、支援は惜しまない親)の子供が、他のタイプの子供に比べ、学校の成績良く、自主性が高く、うつ病になる確率や非行にはしる確率が低かったのです。


お、栗山監督はまさに、このタイプだ。


伸ばす人なんだぁ。


清宮選手、いいとこ行った!


なぜ伸びるのかについても考えてみましょう。


こういう人の下にいると、プレッシャーというストレスの捉え方が変わるということが言えます。


目先の勝ちにこだわる球団とそうじゃない球団の環境の差は、選手たちの視点にも差を生みます。


何としても勝たなくてはならないというチームは、選手を結果によって評価せざるを得なくなります。そうすると自然と選手の視点は短期的なものに向いてきます。


これ、非常に危険な状態です。


ストレスとは、与えられたタスクにおいて、望み通りの結果を得られるかどうかの不確実により出てくる反応です。


それ自体が悪いものではありません。


この反応に対する個人の判断がストレスを良いものにも悪いものにもするのです。


例を使って解説します。


プロは誰もが試合に勝ちたいと思って試合に臨みますが、そもそも試合の結果とは、選べるものではないので、不確実なものです。


勝たなきゃと思うほどにプレッシャーと呼ばれるストレス反応は大きくなります。


欲しいのに、得られるかわからない。


相手が強いほどに、勝ちという結果を得られる可能性が下がりますので、邪魔なものでしかなく、目の前の試合というストレス要因をネガティブに捉えやすくなります


逆に目先の勝利以上に、チームの成長という長期視点を重要視しているチームでプレーしている選手はどうでしょうか。


「お前は偉大な選手になれる」と期待を持たれるわけです。


栗山流の期待は大きく、支援は厚く。


本人も使われるかどうかの目先の結果ではなく、自分が成長したい姿を思い描き、それを目指そうという余裕が出てきやすくなります。


それを目指すためには、練習し、実践でその力を出す鍛錬をするということしかないでしょう。


となると、「試合に出たい」となるわけです。


勝てなくて良いという選手はいませんから、勝ちに行きます。実力を発揮しに行きます。前述のチームの選手同様に、結果の不確実性がストレス反応を生み出します。


ただ、このストレスの捉え方はどうでしょうか。


試合に出たい、結果を残せる選手になりたいと思っている人には、目の前のストレスは成長の糧なんです。


相手が強ければ強いほど、自分を伸ばすチャンスなんです。


前述の選手は、勝たなきゃいけないのに相手が強いほどネガティブなストレスが増えました。


この違いわかりますか?


ストレス自体はネガティブなものではないのです。


なりたい自分像という長期視点に立って目の前の試合を考えると、ネガティブだと捉えていたプレッシャーが成長の糧に変わる。


ストレスを敵にするのか、味方にするのかは、あなたの視点次第。


日本ハムの「何が何でも勝たなきゃいけないわけじゃない」環境が、監督含めた管理職を寛容にし、選手を長期的視点を持てるようにしている。


皮肉な話ですよねぇ~。


でも、これを知っているか知っていないかで、人を育てる力がぐんと変わります。


組織運営も子育ても、要求は高く(期待は大きく)、支援は厚くでいきましょう!


それでは~
バンヒロ

2017年10月3日火曜日

給食を残さず食べるように指導することのデメリット


こんにちは。メンタルコーチの伴です!


給食問題がニュースを賑わせていますね。味は百歩譲ってしょうがいないとしても、髪や虫などの異物の混入というのは、子供の健康に関わってきちゃうので、その安全だけは最低ラインとして守ってほしいですね。


そんな中で、一昨日チラッと見た番組でまずい給食を残させていいのか、という議論が巻き起こっていました。


無理に食べさせようとして、子供が戻してしまうという例が多く出てきていることを挙げて、そこまでする必要があるのかという主張と、忍耐やマナー(給食が配膳されるまでに関わった人々への感謝の気持ち含む)を教えるためにも最後まで食べさせるのが食育なんだという主張。


外出の時間だったので、最後までしっかり見れませんでしたが、すごく興味深い内容だなと思いました。


パフォーマンス心理学の観点から、忍耐力を小分けにしながら、この問題について考えていきます。


まず、前提として、誰のための議論なのか、主張なのかを明確にする必要がありますよね。


番組上で、「自分の頃の給食は不味かったが、みんな残さず食べされれてた。そうやって、我慢強さを学んだんだ」という主張が数度出てきていましたが、この言い方だと自分のやり方を押し付けとも取られてしまう可能性があるなと。


この議論は、子供の体力的、心理的な成長とにとって何がベストなのか、を見い出すためにしてほしいなと感じました。


この投稿では、子供の心理的な成長のみにフォーカスしていきます。



お断りしておくと、この投稿は教育方針はこうあるべきということを伝える目的ではなく、人の成長のために必要な要素をお伝えするものです。

そもそも忍耐力って何なんでしょうか。そして、そのどんな忍耐力がこれからの世の中で要求されていくのでしょうか。


忍耐力といっても、複数の種類があるように思います。


これ、アメリカでパフォーマンス心理学を学んでいる時にすごく混乱したのですが、英語では忍耐力に相当する言葉が3つあります。


Endurance(我慢強さ)、Perseverance(根気強さ)、 Resilience(心理的な回復力)

Endurance


我慢強さ。根気が努力の積み重ねを指すのに対し、これは耐える、我慢するという行動に重点。



Perseverance


根気強さ。目標に向かって、努力を重ねていく力を指します。



Resilience


心理的回復力のこと。なにか辛い出来事に直面した際に、素早く立ち直れる力のこと。


これのどれを育ませたいのかということで、主張は少し異なってくるように思います。


例えば、終身雇用が当然の世の中では、一度入ったら会社を辞める選択肢はデメリットのほうが多い世の中では、①我慢強さがとても重要になってくるでしょう。耐え忍ぶことのメリットや意義が大きい。その中で、この力がないと生きにくい世の中になってしまうのではないでしょうか。


逆に、会社を辞めるという行動が自身に合った仕事を見つける手段という捉え方広まっている世の中(例えばアメリカ)では、①の我慢強さはあまり評価されません。②のなりたいじぶんになるための根気強さ、③の逆境も素早く乗り越える回復力ほど重要視されます。アメリカの大学院の授業でも、PerseveranceResilienceがよく議論されるのに対し、Enduranceは一切出てきませんでした。


心理的回復力でいうと、災害や恐慌など起こる可能性が高い世の中ではとても重要なスキルと言われています。心理的回復力が高い人は、起こってしまったことを認め、理解し、その状況下でどうすべきかという視点に素早く切り替え、必要なアクションを取り始めることができるというのです (Achor, 2013)


給食の話に戻りますが、番組内で言われていた不味くても、食が細くても、最後まで食べきらせるべき、という主張のポイントは、①の我慢強さを育てるということなんだと理解します。


主張の意図はわかりました。では、無理にでも食べさせるしつけによるデメリットとは何なのでしょうか?


無理強いすることで、給食または特定の食材がさらに嫌いになる可能性がある(トラウマ化)こともさることながら、最も重要視したいのは、セルフエスティーム(自尊心)を損なうことです。


セルフエスティーム=自尊心、自分は価値がある人間だと思う感情(誰でも持っている感情です)


これは心の成長において、最も重要な要素です。長年の研究では、セルフエスティームが高い人は、何かを成し遂げる可能性が高いリーダーシップを取れる周囲から受け入れられやすい(Baumeister, 1997; Bednar & Peterson, 1995; Robins et al., 2008; Swann et al., 2007)といった利益により、結果幸福感が高まりやすい(Baumeister et al., 2003)とされています。


セルフエスティームは、周り(両親、先生、友達含む全ての人)との会話や比較で形成されていきます。


給食を例にすると、周りよりも食が細い、好き嫌いが多い、食べるのが遅いといった比較や、先生に「最後まで食べなさい」とみんなが終わっているのに居残りで食べさせられる状況に対し、子供は「自分はダメな子なんだ」と評価をくだしてしまう可能性があります。

この本人による自身への評価が、セルフエスティームを下げる原因となり得ます。


人の成長は日々の全てのイベントとそれに対する本人の評価の積み重ねであり、この給食は一つの毎日起こるイベントかもしれません。

が、あえてこの件(無理やり食べさせるしつけ)から判断するのであれば、セルフエスティームを下げるリスクを取って、我慢強さや、マナーを鍛えるかどうか、がポイントなのかなと思います。


教育方針は各家庭、学校で異なって然るべきですので、方針はこうあるべきなんてなんて言うつもりはありませんが、子供の成長を考えるなら、自尊心を傷つけない方法で給食に携わった方々への感謝やマナー、栄養学など必要なことを教えてほしいなと思います。
(しつけ、叱責が必要ないというわけではないです。)

ここからは、私個人の意見ですが。我慢強さだけで言えば、セルエスティームを下げてまで、獲得する必要があるものではないのではないかと思います。

働き方革命が謳われ始めた昨今から鑑み、10-20年後にはさらに自由な仕事環境になっていることが容易に想像できます。


そんな環境では、与えられ場所で与えられた職務を我慢しながら全うする力よりも、リーダーシップなどの率先力(セルエスティームが大きな影響を与える)のほうがよほど重要だと考えるからです。
(違う意見の方も多くいると思います。そうであるべきだとも思います)


子供の食事が体力的な成長の妨げにならない範囲であれば、無理強いはしないほうがいい。

その代わり、子供たちには食事をバランスよく食べることによる本人へのメリット(食べないことのデメリット)を理解してもらう。

そして、いつも食べられないものを食べたり、残さず食べられたときには褒めてあげることで、セルフエスティームを育みながら、食育(マナー含む)も目指す、これが理想なのじゃないでしょうか。

どういう子供を育てたいのか。それを決めてから、どういう教育方針にすべきか、コミュニケーションを取っていくのかとステップであれば、その番組もより有意義な議論になったのかなと感じました。


再度言いますが、子供たちにとってベストな教育方針が何かということは、僕にはわかりません。伝えたかったのは、どのような教育方針であれ、私は(僕は)ダメな子なんだ、という想いを持たせてほしくないということです。

直近のセミナーでも、部下を育てる会話術をテーマにしました。このテーマの中心もやはりセルフエスティームを下げないということでした。御好評をいただいたので、セルフエスティームを意識したコミュニケーション術は定期的に広めていきます(^^)/


それでは~
バンヒロ

2017年9月12日火曜日

“プレッシャーに強い人”になる方法

こんにちは。メンタルコーチの伴です。


今回はプレッシャーに関する投稿です。


“プレッシャーの掛かる大会で練習通りの力を出せない”、これは相談を受ける中で一番多い悩みかもしれません。


先日ある大学の部活の合宿に帯同させていただき、スポーツ心理学とは?メンタルトレーニングとは?という話をさせてもらう機会がありました。


競技の特徴もその理由でしょうが、競技者達の悩みの大多数がプレッシャー関連でした。


私自身も学生時代はテニスをしていた時、スポーツ心理学を学び始めたきっかけは、どうやってプレッシャー環境下で実力を発揮するか、というものでしたし、アスリートの親御さんから、息子が本番にとことん弱いタイプなのだが、どうしたらいいのかという相談を受けたこともあります。


“本番に弱いタイプ”、それを変わらない人間性だと捉えられている方が多いですが、科学的根拠を基に強く否定します。これは鍛錬できる“メンタルスキル(脳の使い方)”なのです。


その脳の使い方を習得する方法を書いていきます!


まずは、なぜプレッシャーが起こるのか、について考えましょう。


プレッシャーとは、ある外的要因によって引き起こされるストレスの一種です(Dosil, 2006)。


プレッシャーが発生する流れについて、Pearlin氏(1981)のストレスプロセスモデルを基に説明します。




脳はあるイベントに対し、自動的に2ステップで状況把握を行います。

(1)自身に利害関係があるかどうか。
(2)そのイベントにおいて得たい結果を得られるリソース(能力、スキル、サポート含む全ての資源)があるかどうか。


イベント=競技大会としましょう。


大会での結果がどうであれ自分には影響を及ぼさないと認識した場合、プレッシャーは出てきません。


逆に、結果が自身にとって重要と認識した場合は(2)の自身のリソースとの比較に移ります。


ここで、自身のリソースがあれば確実に望んでいる結果が手に入ると認識した場合、プレッシャー(ストレス反応)は出てきません。


逆に、望んでいる結果が手に入らない、もしくは、手に入るかわからないという認識をした時にプレッシャーが出てくるという流れです。


ちなみに「認識」という言葉を使っているのは、リソースの実態ではなく、リソースに対するセルフイメージ(自信)とストレス要因(ここでいう大会)との比較であるからです。


ただ、どの競技においても言えることですが、“結果”というのは競技者のプロセスによる副産物であり、コントロール出来ないものです。


従い、どれだけ自信が高くとも、結果に対する不確実性というものは残ります。結果を残したい。でも結果を残せるかわからない。そんな考えが生まれ、プレッシャーは出てくるというのは至極当然のことなのです。


プレッシャーを感じているということは、自身が目の前のイベントを重要視しているサインと捉えてあげることが第一歩です。


さて、プレッシャーの発生プロセスはわかりました。でもそれがどのようにパフォーマンスに影響を与えているのでしょうか。


結論から言うと、結果を残したいという思考が、本来集中しなくてはならないものへの集中力を阻害するからです(Boutcher, 2002; Magill, 1997)。


勝ちたいと思うと、「これは失敗できない」、「このポイント大事だぞ」なんて思考が出てきます。


本来集中しなくてはならないものとは、もちろん競技により異なりますが、良いパフォーマンスをするための技術的なポイントだったり、戦術を決定するための情報だったりします。


人の意識というのは限られた資源です。それを勝てるかな、勝てないかな、という思考に消費する間、集中しなくてはならないことを見逃してしまうということなのです。


では、どのようにプレッシャーをコントロールするかについて、2つのアプローチを紹介します。


(1)プレッシャー自体を軽減する
(2)意識をコントロールする方法を身に付ける


それぞれのアプローチに関し、2つずつスキルを書いていきますね。

(1)プレッシャー自体を軽減する

①自身の強みに目を向ける癖をつける

上記では、プレッシャーは自身に対するリソース(いわば自信)とストレス要因の比較で出てくる、また、結果はコントロール出来ないものなので、その不確実性がプレッシャーを生むという話をしました。


プレッシャーがなくなることはありませんが、自信が高いとプレッシャーという感情が軽減します。


前回の投稿で、日本人は不安を抱きやすい人種であるという研究を紹介しました。自分に厳しい人ほど、持っているものよりも、足りないものに意識が行きがち。悪いことではありませんが、自信を持ちにくいという話でした。


なので、あえて自身の持っているもの、強みは何かということを意識的に考えるようにする。その思考の繰り返しが、リソースに対する認識をポジティブに深め、結果プレッシャーを軽減することに繋がります。


②“なぜ”を考えることでプレッシャーを軽減する

プレッシャーは望む結果に対し、達成できるかどうかの不確実性により出てくるということでした。


この望む結果を、トロフィーや順位ではなく、自分の成長にリンクさせられるとプレッシャーは軽減されます。


私が通っていたデンバー大学大学院の教授がメントレを行っていたアルペンスキーヤーのお話です。


冬季オリンピックでのこと。一回目の滑走が終わりトップのため、2回目の滑走順が最後に割り振られました。


自身の前の滑走者が、素晴らしい滑りをし、さらに良い滑りをしないと金メダルを取れない状況で出番が回ってきました。


その状況にとても緊張を覚えたそうです。ただ、その状況で彼女が行ったメンタルスキルは、“なぜスキーをやっているか”を振り返ることでした。


「オリンピックで金メダルを取ることは、目標である。ただ、スキーをずっと続けている目的は、この大好きなスポーツをさらにうまくなりたいということだ。この緊張する場面で、いつもの滑りを出せる自分に挑戦する。そちらのほうが金メダルを取ることよりも大事だ。」


そう考えたそうです。人は結果に囚われがち。そしてそれがプレッシャーを肥大化させるのです。


なぜそれを始めたのかを考えることで、その目的を思い出すことで、プレッシャーを低減するスキルの素晴らしい例です。


そのスポーツを始めたころの想いを思い返してみてください。なぜそれを始めたのでしょうか。大会で優勝するためだったでしょうか。大会での結果は目標であり、目的ではないはずです(無論、練習時には、目標もやる気を引き起こすためには必要ですが)。


(2)意識をコントロールする方法を身に付ける

プレッシャー環境下で、実力発揮を阻害しているのは、集中すべきタスクから意識が離れてしまっているからだという話をしました。


①プロセスゴールを見極める

従い、集中すべきタスク何かを見極めることから始まります。そして、それは望む結果からのプロセスへの細分化で見い出せます(Weiberg, 2002; Gould, 2001)。


望む結果(アウトカムゴール)
   ↓
アウトカムゴールを達成するために必要なパフォーマンス(パフォーマンスゴール)
   ↓
パフォーマンスゴールを達成するために集中すべきタスク(プロセスゴール)


スキーを例にすると、下記になるかと思います。

アウトカム:〇〇秒でゴールする

パフォーマンス:納得のいく完璧なターンを最低5回する

プロセス:外側に体重を乗せる

※スキーは全くやったことがないので、内容の正当性よりも、やり方をご理解いただければと思います。コーチなどがいるようであれば、どのようなプロセスゴールを設定すべきかを相談して決めていくことをお勧めします。


〇〇秒でゴールすることを目指すわけですが、レース中に結果を考えることは、阻害要因でしかありません。


望む結果を得るために集中すべきプロセスゴールをレース前に決めておくことで、限られた資源である意識を有効に使うというアイディアです。


プロセスゴールは、戦略によっても異なると思います。会場のコンディションなどにより変わるでしょう。技術面、戦術面を考慮に入れたうえで、得たい結果に直結するプロセスゴールを設定することがキーです。


このプロセスゴールが多すぎても、パニックになる要因になります(Hardy, Jones & Gould, 1996)。ですので、集中できる範囲で決められることが重要です。


②セルフトーク(キューワード)

集中する対象が決まった後は、それにどのように意識を集中させるかということが大事になってきます。


最もよく使われているスキルにセルフトークというものがあります。


セルフトークとは、自分自身への声掛けであり、脳がポジティブなセルフトークで満たされるとパフォーマンスが発揮されやすくなるという研究が多数あります(Weinberg & Gould, 1999; Bunker, Williams & Zinsser, 1993)


ここでは、意識のコントロールのツールとして紹介します。


プレッシャーの掛か大会中には、冷静時に考えられることが、全く考える余裕がなくなることもしばしばあります。そんな時でも、プロセスゴールをリマインドできるキューワード化をすることが有効です(Zinsser, Bunker & Williams, 2001)。


外側に体重を乗せる、を「外」などのシンプルなキューワードとし、レース中に、「外、外」と自身に語り掛けることで、プロセスゴールに意識を向けることが出来るのです。



プレッシャー対策のための2つのアプローチ、(1)プレッシャー自体を軽減する、(2)意識をコントロールする方法を身に付ける、ご理解いただけましたでしょうか。


ご自身の競技(ビジネスパーソンの方はプレゼンなど)に当てはめて、考えてみることでさらに理解は進みますよ(^^)/


それでは~
バンヒロ

2017年9月4日月曜日

希望に溢れる子供の育て方

こんにちは。メンタルコーチの伴です!


9月1日は1年で最も未成年の自殺数が多い日なのだそうです。夏休み明けの学校初日、いじめられたりしている子は学校に戻りたくないと考えるのでしょう。


ニュースで知り、とても悲しい気持ちになりました。少し経ってしまいましたが、そんな子供たちを救える方法について考えてみようと思いました。


子供たちが自殺に至るまでの思考プロセスに思いを巡らせてみると、置かれた状況を抜け出す希望が見いだせなかったのではないかと胸が痛みます。


友達と仲良くしたい。当たり前の感情であり、多くの子供が望んでいることでしょう。


その望む結果に反し、いじめという現実を突きつけられる。


「どうやったら、この状況を抜け出し、仲良くなれるのか。」


色々考えてみても、なかなか方法を見い出せない。乗り越えられる自信も持てない。


そして、自分の未来に絶望してしまい、自殺という行動に追い込まれて行ってしまうということなのではないでしょうか。


子供に対し自分の力で希望を見い出せというのは酷な話なので、周りのサポートがとっても重要です。親として、指導者として、メンタルトレーナーとしてどのように“希望に満ち溢れる脳を育むか”という長期的な視点をテーマにします。


学術的には希望とは、下記2つの和であると定義づけられています(Rand & Cheavens, 2009; Snyder, 2000)。

(1)望ましい結果のために、困難を乗り越える道筋を立てられる力
(2)その道筋を実行するやる気またはやり抜く力


希望は困難に直面した時こそ力を発揮します。


高いレベルで希望を持っている人は、失敗よりも成功について考えることがわかっています(Snyder, 2000)。効果的な達成方法を見い出し、かつ、自信を高く保つことできるため、目標達成する可能性が高まるわけです。


友達からいじめを受けるという困難に直面した時に、絶望に打ちひしがれるのではなく、この状況をどう好転させられるかを考えられる脳を育てることで、最悪の結果(=自殺)を抑止するというアイディアです。


では、どのようにすればこの“希望”を育むことができるのでしょうか。


その答えは、上述の希望に関する定義にあります。

(1)望ましい結果のために、困難を乗り越える道筋を立てられる力
(2)その道筋を実行するやる気またはやり抜く力


日常の例を使って、一つずつ考えていきましょう。

(1)望ましい結果のために、困難を乗り越える道筋を立てられる力


例えば、次の運動会の徒競走で一番になりたいA君がいるとします。同じ組には現時点で自分より足の速い子がいるそうです。


望む結果=徒競走で1番になる
困難=同じ組に自分より足の速い子がいる


結果達成の方法として、「正しいフォームを学び、それを身に付けることで、自身の走力を上げること」が挙げられるでしょう。


本人が思いつくようであれば素晴らしいですね。もしその方法を思い浮かばない場合には、周りの大人がリソースとなり、有効な方法を設定する手助けをしてあげることが重要です。


さらに、この方法で行くと決めた場合、正しいフォームに関する情報も必要ですね。ネットで調べるもよし、図書館に連れていくもよし、専門家に依頼するもよし、そういうリソースを提供してあげるサポートをしてあげましょう。


こういう日々の経験を通して、望む結果をどのように達成するかという問題解決への道筋を立てられる力を高めてあげることが希望に溢れる脳を作るポイントです。


Snyder氏(2000)の研究では、たくさんの困難を経験している人ほど、高いレベルの希望を抱きやすいということが明らかになっています。


可愛い子には旅をさせよ。我が子が可愛いなら世の中の辛さや苦しみを経験させたほうが良いという意味のことわざですが、科学的に証明されているんですね。


ただ突き放すのではなく、必要に応じて親や指導者がリソースになってサポートしてあげてください(^^)


(2)立てた道筋を実行するやる気とやり抜く力

やり抜く力とはいわば自信です。


先ほどの例を使うと、正しいフォームを身に付ければ足の速い子に勝てるんだと、自分の能力を信じられるかどうかです。


自信は、過去の経験に対する本人の捉え方の積み重なりで作られるセルフイメージです。ですから、日ごろから自身の良かったことに目を向ける思考の癖を作ることが自信を高めるうえで大きな役割を果たします。


ある体験の結果の原因を何に求めるのかを理論化した帰属理論というものがあります(Heider, 1958; Weiner et al, 1971)。


楽観的な人と悲観的な人では、下記のような差があると言われています(Seligman, 1991)。




説明します。

楽観的な人は、うまくいったときに「これは自分の○○が良かったんだな」と内的要因に原因を結びつけます。逆にうまくいかなかったときは、運がなかったなど外的な要因に結びつけます。


かたや、悲観的な人はその逆です。うまくいったときには、「今回はたまたま調子が良かった」などと外的な要因に結びつけ、うまくいかなかったときには、「私の○○が良くなかったんだ」と内的な要因に結びつけるのです。


ギクッとした方多いかもしれません。


日本は悲観的と呼ばれる脳を持つ人が世界で一番多いという統計があります。


悲観的なことが悪いわけではありません。うまくいかなかった原因をそのままにしない日本人の素晴らしい性格がものづくりのレベルを高めていることは間違いありません。


ですが、自信の観点から見ると、悲観的な思考は自信を積み上げにくい、ということなんです。


でも、ご安心ください。


この楽観主義は獲得できるスキルだと証明されています(Seligman, 1991)。親御さん、指導者の方は、子供の自信を高めるためには、成功した体験の後には、内的な部分(努力、能力、思考など)で何が良かったのかを考える機会を与えてあげるようにしてください。



その積み重ねが、自分の強みを認識する手助けになり、いずれ思考の癖になってきます。


その思考の癖により、自信が高められ、困難にぶつかったときにやり抜く力としてお子さんをサポートします。


一昨日のこと、たまたまですが、大手メーカーに勤める友人が研修で、ビジネスパーソンとして成功する2つの能力として、問題解決能力前向きさであると習ったと聞きました。


まさに“希望”じゃないか~と思いました。


自殺を防止するというテーマで考えていたことが、企業が必要としている人材にもつながってくるんだなと、今これ書いていてワクワクしてます(笑)


数字だけ見ると人口減少で将来への不安が募ってしまいますが、一人一人の質的には何やら“希望に満ちた若者が多いジャパン”になってほしいなと思いますし、そうなれるようなサポートをこのメンタルコーチという仕事を通じて行っていきたいと思います。


話はそれましたが、希望にあふれる子供は育てられる、そして、そのためには周りのサポートが必要!というお話でした。


それでは~
バンヒロ

2017年8月26日土曜日

「勝てる人になりたい」松山選手へのメントレ案


こんにちは。メンタルコーチの伴です!


今回は、前々回に書いた「松山選手のコメントから考えるゴルフにおけるメンタルタフネス」の続きです。


その投稿では勝てるゴルファーとして下記4つが特に必要な心理的資産だというお話をしました。

(1)気が散る要因がたくさんある中で、自身のタスクに意識を集中させるスキル
(2)自信を高め維持するスキル、特にミスショットの後にも自分の能力を信じるスキル
(3)ベストパフォーマンスを発揮しやすい気持ちの高まりをコントロールするスキル
(4)物事を前向きに捉えることが出来る視点を持つ

では、どのようなこれらのメンタルスキルを獲得するのか、というのが今回のこの投稿のテーマです

とその前に、大事なポイント!

メンタルトレーニングでは、このトレーニング方法が全ての人に効果的!というものはありません。ここで紹介するのは、その効果が研究で実証されているもののみですが、それは多くの人に効果があったという話で、全ての人に効くというわけではありません。
ですから、どれがクライアントに効くのかを使ってみて、これ効果あるな、これ違うなという風にトライ&エラーを繰り返しながらメントレのプログラムをテイラーメイドで作っていくのです。

さて、本題に戻ります(^^)/

メントレ案:

(1)自身のタスクに意識を集中させるスキル
"Let go of the past(過去を手放す)"という考え方を知る

ゴルフの特徴は、18ホールをプレーするということです。各ホールが新たなミニゲームなのです。前のホールでミスがたくさん出てダブルボギー(ホールに入れるまで平均より2打多く打ってしまうこと)であったとしても、次のホールはまた一から他の競技者と一緒に打ち始めます(当然スコアには関係してきますが)。

となると、前のプレーを引きずる意味はなく、出来ることと言えば、常に新たな気持ちでそこからのベストを目指すことです。

冷静な状況で言われれば当たり前なのですが、スコアに囚われていると、色々と計算してしまったり、あそこでミスが出なければという考えが浮かんできます。

その考えを手放すことが重要。それがLet go of the past(過去を手放す)ということです。

Cohn(1991)が研究でゾーン(ベストパフォーマンスが出せている状態)にいるときの状況を多くのトップゴルファーからアンケートを取りました。彼らが共通して答えたのはは、「余計なことを考えていなくて、自分のタスク・パフォーマンスに没頭している状態」、「ミスショットを打つ不安など一切考えていなかった」でした。


まずはこの事実を知っておくことです。


セルフトーク(キューワード)

そして、実際に必要なものに意識を向けるテクニックとして、キューワード(Cue word)を紹介します。

何に集中し、何に意識を向けないようにするかという選択が常に求められる状況下で、短い合言葉を持っておくことはとても有効です。


"今に集中"

"このショットが今からのゲームの始まり"

などの短い言葉を持つことで、過去からに意識を向けることができます。



Owen & Bunker(1992)の研究ではLDT guidelineというスキルが提唱されました。
Lie
(ボールが止まっている場所、芝の状態)
Distance(ピンまでの距離)
Trajectory(打つボールの軌道)

の頭文字を取って、LDTです。


LTDとつぶやくことで、集中すべきことをリマインドしてあげる。

ゴルフ経験者ならこれらを確認するのは当たり前と思うかもしれません。試合中のカオスの状態では、冷静に考えればいいことがわからなくなることがあります。このようなシンプルな言葉で確認すべきことをリマインドすることで、状況判断力の向上、パフォーマンスに対する不安をコントロールできるメリットをもたらします(Owen & Bunker, 1992)


(2)自信を高め維持するスキル、特にミスショットの後にも自分の能力を信じるスキル
自信は選択であることを知る

自信とは、過去の経験を基に作られた自分の能力に対するセルフイメージです。


アメリカでは、Confidence is a choiceとよく言われています。

何に目を向けるのかはあなたの選択という意味です。

自信は確かに過去の経験から作られますが、経験を積めば積むほど勝手に高まっていくものではありません。あなたがそれをどう捉えたかによって自信が積み上げられるのか、そのままなのかが決まります(Dosil, 2006)


ゴルフの例で考えてみましょう。何万本の素晴らしいショットを打ってきているゴルファーがいるとします。


前回のショットがミスしてしまったとしましょう。その時に

「あぁ、前回ミスしてしまった。今回のショットうまくいくかなぁ」

と捉えるか、

「前回ミスしたけど、何万本の素晴らしいショットを打ってきているんだ。淡々とタスクに集中するだけ」

と捉えるか、どっちが自信を高められると思いますか?

ポイントはどちらの思考も間違っていないということです。


どの状況においても、最もポジティブな現実に目を向けることが出来るかで違いを生みます。


自信は選択である、という意味がご理解いただけましたでしょうか。

こういう思考の癖をつけることが、自信に溢れた人間になる近道です。


イメージトレーニング

自信が高い人は、そのタスクが失敗かどうか、失敗したらどうなるかというネガティブな面よりも、それが成功する理由、成功した情景により時間を割いているということがわかっています(Dosil, 2006)


ショットを打つ前に、理想のショットを打っている自分をイメージしてあげることで、自信が高まり、素晴らしいパフォーマンスが出る可能性を高めます(Nicklaus & Bowden, 1974; Bandura, 1997)

そして、そのイメージの有効性を高めるには、五感を活用することです(Goss, Hall, Buchholz & Fishburne, 1986; Janelle, 1999)


視覚(どんな景色か)
嗅覚(どんな匂いがするか)
聴覚(どのような音が聞こえているか)
触覚(クラブを握った感覚、体の力み具合など)
味覚(どんな味がするか)これにおいてはゴルフには使えないかもしれませんが。


極力多くの感覚を交えてあげることで、脳が経験したことと錯覚し、自信に繋がります。

逆に失敗する情景を思い浮かべてしまうと、自信低下につながり、良いパフォーマンスが出る可能性が下がります。


(3)ベストパフォーマンスを発揮しやすい気持ちの高まりをコントロールするスキル

人はそれぞれパフォーマンスが出やすい自身の最適な緊張レベルというものがあります(Hanin, 1997, 2000)。下記イメージ参照。


2ステップ:
1.自身の最適な緊張度を知ること
2.緊張度を調整するスキルを見つけること


1.自身の最適な緊張度を知ること
最もよく使われている方法は、過去のベストパフォーマンスを振り返り、パフォーマンス前にどのような状況だったか克明に思い出してみることです(Hanin, 1999)


また、緊張度をスケールにしてみることもわかりやすいでしょうね。0-10、0を寝ている状態、10を緊張度マックスとし、それを記録していくと、自信のパフォーマンスが出ている時の緊張度の傾向が出てきます。

 2.緊張度を調整するスキルを見つけること
最適な緊張度がわかってくると次は最適な緊張度に持ってくるスキルが必要です。
下げることをサイクダウン、上げることをサイクアップなんて呼びます。


【サイクダウン例】
・深呼吸(Taylor & Wilson, 2002)
・動き回る(Taylor, 2001)
・リラックスできる情景を思い浮かべる(Taylor & Wilson, 2002)


【サイクアップ例】
・浅く呼吸を行う(Taylor & Wilson, 2002)
・アップテンポな音楽を聴く(Rider & Achterberg, 1989; Williams & Harris, 2001)
・優勝を決める最後のパッティングをイメージする(Zaichkowsky & Takenaka, 2001)


昔緊張したら、手のひらに人という字を三回書いて飲み込むなんて方法を教えられましたが、その方法が有効という研究は見当たりませんでした()


(4)物事を前向きに捉えることが出来る視点を持つ

これは、(2)自信で述べたことと似ているかもしれません。


最もポジティブな現実を見つける思考の癖を身に付けるということです。


スリーステップ:
1.ストレスに気づく
2.ストレスの理由を明らかにする
3.最もポジティブな現実を見つける


例を挙げて考えましょう。

1.ストレスに気づく
「前の組が遅く、プレーを待たなくてはならないことにストレスを感じている。」


2.ストレスの理由を明らかにする
「待つ=自分のペースを崩されると考えているから、待つことにストレスを感じているんだな。」


3.最もポジティブな現実を見つける
「待つことによるポジティブな現実ってなんだろう。ポジティブなイメージトレーニングを出来る時間をもらったということだな。」


どちらの思考も現実ですが、ポジティブな側面に目を向けることにより、感情をコントロールできます。


ストレス=ネガティブと捉えられる方は多いかもしれませんが、そうではありません。ストレスをうまく向きあうことで、脳の機能を活性化(記憶力、集中力、情報処理能力アップ)させたり、ケガを早く回復させる、免疫力が高まるなどの効果が証明されています(Achor, 2013)


メントレってこんなことやるんだ~と理解いただきたい一心で書いていたら、長くなってしまいました( ;;)

まぁ、簡単なイメージだけでも掴んでいただけると嬉しいです。


それでは~
バンヒロ